第二章 DT、JKと宿屋で二人きりに!?
職業は「JK」です! ~冒険者登録~
ロバートは、所属ギルドのある『ステートル』の街まで戻ってきた。
まる三日かかる道のりも、転送魔法でまたたく間に到着である。
「ここが、ステートルの街だよ」
「うわああ。修学旅行で行ったテーマパークみたい!」
また、ヒナマルはスマホという端末を取り出す。
はしゃぎながら、バシャバシャと街並みの写真を取り始めた。
ロバートからすれば見慣れている景色も、ヒナマルからすれば道のワンダーランドなのかもしれなかった。
「あっそうだ。バッテリーヤバいんだった。充電もできないみたいだし」
スマホを見つめて、ヒナマルは不安がる。
『心配無用。ワシがそばにいる限り、燃料には不自由せん』
ミニムの体内には、微量の魔力が終始流れているという。
その魔力を電力に変換して、スマホのバッテリーを常に満たすらしい。
「マジで? いいの?」
『半ば人さらいをしたんじゃ。それくらいはのう』
ミニムもミニムで、気にはしているようだ。
「ありがとう、ミニムさん」
『ワシは、ひ孫の顔が見れたらそれでええよってに』
どこまでも抜け目がない。
「だってさ。ロバちゃん」
「ふざけてないで、行くよ?」
「ところでさ、ロバちゃん。どこへ?」
「ギルドだ。冒険者の登録をしに行くんだ」
「さっきも、そんなこと言ってたね? 冒険者登録って、なに?」
そこから説明しないといけないのか。
「キミがこの世界の住人になるための、手続きだ」
手続きをおろそかにすると、関所を通過する度にムダな税金を取られる。
さっきも門前で、銀貨を一枚請求された。
ヒナマルという、部外者を連れてきたから。
冒険者として正式に身分を明かせれば、その手間も解消されるのだ。
「ああっ、住民登録みたいなカンジ?」
「まあ、近いかな?」
おそらく、見たほうが早い。ギルドへ向かう。
「ここが、冒険者ギルドだよ」
「ホントにお役所みたい」
きれいな石造りの建物の中へ、二人で入った。
内部にある掲示板に、屈強な戦士や若い魔術師が殺到している。
「おい、黒鉄のロバートが帰ってきたぜ!」
「まあ。ロバート様! ごきげんよう」
「キャッ、こっち見たわ! 呪われる!」
「あぶねえ、非モテがうつるぜ!」
ロバートの姿を見るなり、冒険者たちが騒ぎ出す。
「ひょっとして、めちゃ有名人?」
「多分だけど、それなりかな?」
正直、ここではレックスのほうが有名だ。なぜなら……。
それにしても。
「おい、黒鉄のロバートが、女連れてやがる!」
「しかも、べっぴんだぜ」
「誘拐かしら?」
「いいや。おおかた非モテをこじらせて、ドレイを買ったんじゃろ」
「かわいそうなロバート様」
「じゃあ嫁になってやれよ」
「イヤよ!」
なぜだろう。不本意なセリフしか飛んでこないのだが。
「黒鉄のロバート様ではないですか。今、討伐依頼からお帰りですか?」
受付の女性が、椅子から立ち上がってお辞儀をした。
「まあ。珍しく、素顔なのですね?」
ギルドの受付嬢から指摘を受けて、ロバートは慌てて黒鉄のカブトをかぶる。
「どうして隠されますの? ステキなお顔ですのに」
「ボクのポリシーだ」
ロバートが言うと、受付嬢が苦笑いを浮かべた。
ヒナマルも、クスクスと笑いながら呆れている。
「それよりも、だ。ねえ、ヒナマル。例のドラゴンから獲ったウロコがあるでしょ? 受付嬢に渡すから出してくれないか?」
「ああ、シッポに付いてたあれ? わかった。ほい」
ロクに大事にもせず、ヒナマルはあっさりとロバートにウロコを差し出した。
ドラゴンのウロコといえば、武器にも防具にも魔法の触媒にもなる。冒険者垂涎のアイテムなのだが。
「これが討伐の証」
ロバートがレッドドラゴンのウロコを、受付嬢に渡す。
「あと、コイツを操っていた人物がいるらしい。調べてくれ」
「レッドドラゴンを?」
受付嬢の表情に、緊張が走っていた。
「……承知しました。ギルマスに報告いたします」
ウロコを丁寧に持って、受付嬢は別の担当へリレーする。
「それから、新米冒険者の登録を頼む」
受付嬢は、ヒナマルを見て事情を察した。
「はい。承ります。そちらのお嬢様が、ご登録ですね。ですがロバート様、誠に恐縮なのですが……」
なぜか、受付嬢がモジモジする。
「どうしたんです?」
「婚姻届は、お役所の方でお願いします」
「冒険者登録だってばっ!」
机をバンバンと叩いて抗議した。
「冗談です。ではお嬢様、こちらの用紙に必要事項をご記入ください」
「どもっす」
ヒナマルは受付嬢から、半紙をもらう。
紙には、名前や職業を書く項目が並んでいた。
「名前は、ヒナマルっと」
どうしても、本名は語る気がないらしい。
「年齢は一七歳。メールアドレスは書く欄がないね?」
ロバートは考え込む。メールとは?
「まあいいや。これでいい?」
「ヒナマル様ですね? かしこまりました」
記入用紙を受け取った後、受付嬢が首を傾げる。
また何か、ヒナマルがやらかしたか?
「あのー、ヒナマル嬢。つかぬことをお聞きしますが……」
「なに? 不備があんの?」
「職業欄に、JKとありますが?」
受付が、職業欄に指をさす。
「そのまんまの意味だよ。花の女子高生」
ヒナマルはドヤ顔をしているが、受付嬢には通じていないらしい。
「彼女は学生です!」
ヒナマルの口を手で塞ぎ、ロバートが代弁する。
「学生ですか。承知いたしました。年下がお好きなんですね」
「いや関係ないでしょ!?」
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