第3話 救出作戦

 美空みくはシェンリーを連れ、再び警察署へ向かった。

 数時間ぶりの来訪。受付の女性はこちらを一瞥すると、眉間に皺を寄せてあからさまに不愉快そうな態度を示す。取り合うつもりはないと、無言で圧力をかけてくる。

 しかし、美空は話し合いで穏便に解決しようなどという考えはとっくに捨てていた。シェンリーにここで待つよう手で合図してから、女性に歩み寄る。


「何のご用でしょう? 何度来たところで容疑者との面会が許可されることはありませんよ?」


 毅然と応対する女性に、美空は強い口調で言う。


「分かっています。ですから、力ずくで解決します」

「はぁ?」


 顔を顰める女性。まさか警察に楯突く愚か者などいないと思っているのだろう。だが、そんな常識は自分には関係ない。

 美空は右手を女性の方へ伸ばし、魔法を唱える。


「魔法目録三十三条、拘束」


 直後、女性が大きく目を見開いて慌て始めた。どんどんと顔が青ざめていくのが分かる。腕や脚を動かそうとしては失敗を繰り返す。この手の魔法は経験が無いのか、突然の拘束魔法にかなり動揺している様子だ。


「くっ……。なぜ、なぜ身体が動かない……!」

「私は先ほど、力ずくで解決すると言いましたよね。聞いていなかったのですか? この魔法を解いて欲しければ、ワン・メイフェンさんの居場所を教えてください」


 脅しの言葉とともに、魔法の力を強めていく。

 拘束魔法は力のかけ方によっては人を死に至らしめることも出来る。きっとこの女性は今、迫りくる死の恐怖に怯えていることだろう。


「わ、分かりました、教えます、教えますから……!」


 息が上手く吸えなくなったのか、喉元に手を当てる女性。

 美空が右手を下ろすと、女性はゲホゲホと咳をして呼吸を整えた。


「……ワン・メイフェンは、二階の、取調室にいます」

「取調室、ですか。ありがとうございます」


 見事居場所を聞き出すことに成功した美空は、女性に対してわざとらしく微笑みかける。そして、安全な場所で待機させていたシェンリーを手招きで呼び寄せた。


「シェンリーさん、お姉さんの居場所が分かりましたよ」

「本当に!?」

「ええ。早く行きましょう」


 嬉しそうな表情を浮かべて駆け寄ってきたシェンリーの手を優しく握り、美空は取調室のある二階へと階段を上った。

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