第2話

 その日。ひとりで、呑んでいたら。黒い服に、黒いスカートの女性が、いつも彼の座っていた席に座って。わたしに、話しかけてくる。


眞逆時津あまさかときみつさんのことについてです」


 彼の名前を言われて。どきっとした。黒い服に、黒いスカートの女性。凛々しい見た目。しゅっとした体躯。見た目も顔も普通のわたしには、何回転生しても敵わないであろうプロポーション。


「彼の宣告通知の欄には、あなたの名前だけがありました」


 机の上に。


 封筒が、1通。


「たしかに、お渡しいたしました。お読みになるかどうかは、あなたの自由です。それでは」


 黒い服に黒いスカートの女性。綺麗な動作で立ち上がって、ふわっとした挙動で歩き去っていく。


 机の上の。封筒。


 さっきの女性が彼の恋人やそういった類いの人ではなくて、安心した自分がいる。自信がない自分自身に、多少の後ろめたさ。わたしにとっては、彼一人だけ。でも、彼が、わたし以外の女性と一緒にいるかもしれないとは、思わないでもなかった。こんな普通の女性。いつか普通に、捨てられる。そんなことばかり、思っていたから。


 封筒の中身。


 MIA通知なんてものが入っているなんて。


 思わなかった。

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