曇り空、背中の温度 (新規)

第1話

 夜空。

 曇っているし、月も隠れていて。何も見えない。そういう空のなかでも、きっと、彼は飛んでいるのだろうか。

 バーの、端の席。外の景色と、夜空が見える場所。彼と出会ったのも、ここだった。

 何か特別な出会いや、衝撃的な出来事があったわけでもない。ただ、相席になった。それだけで、お互いが、お互いの相手なのだと、思った。

 彼が来ない夜でも。ここに来て、ゆっくり、お酒を傾ける。日本酒のときもあれば、ワインのときもあった。気分によって、変わる。彼は、ずっと炭酸飲料だった。仕事の関係で、呑めないと、ほほえんでいたのを覚えている。お酒の力を借りて仲良くなろうとしたのを、そのときは後悔した。

 彼と。

 もっと仲良くなっていれば。

 いつも。思う。


 曇っているのに。流れ星が、見えたような気がした。それは、暗い空をいくつも横切って。綺麗に、線を残して消えていった。

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