破壊、そして終幕に向けて
「あのー……マティウス? ちょっとお願いがあるんだけど……」
フィールが腰を低くお願いしてくる、低姿勢なときほど要注意だ、無理なお願いのことが多い。
「なんだよ? 今度はなにと戦えばいいんだ?」
フィールは言いにくそうに語った。
「実はね……魔王が宣戦布告してきたらしいのよ」
あー……前にかなり消し炭にしちゃったからなあ……恨まれるのはしょうがないなー
ただし出来れば戦いたくは無いのだが……そうもいかないのだろう。
「俺を指名したんだろう?」
「うん……マティウスの首を差し出すか、我々と全面戦争するか選べってね……」
「で、王様は俺の首を差し出せと?」
フィールは首を振った。
「そうなるかなとは思ったんだけど違うみたい、マティウスに魔族と戦って欲しいって。処刑しようにもこの前の魔法が王宮に飛んできたらたまったもんじゃないって事でできればマティウスが勝って欲しいなー暗いな考えみたい」
ふむ、まあ余裕だろうな。魔族領はこの大陸の三分の一、魔石量があれば余裕な相手だ。
しかし魔族がその対策をしていないのだろうか?
「魔族は俺に対する対策はしていないのか?」
「全兵力をスタイン領に向けてるみたいね、私たちに逃げ場はないしマティウスに勝ってもらうしかないわ」
はぁ……結局俺が全滅させるのか、手間ではあるが俺が蒔いた種だ、きっちり決着をつけよう。
「フィール、魔石をありったけ用意してくれ、魔族を消し飛ばす」
フィールは驚いた顔でこちらを見る。
「そのつもりだけど……消し飛ばすって……」
――そうして魔族の領地到達予想は明後日となり、急遽ありったけの魔石が集められた。
「マティウス、魔石はこれだけ用意できたわ、勝てるの?」
「俺を誰だと思ってるんだ? 金が十分にある戦いで負けたことはないんだぞ?」
俺がそう言うとフィールは肩をすくめて言った。
「ま、「札束魔導師」だしね」
「そういうことだ」
魔族が領地内に入ってくる前に片付けることになっている、大型魔法を使うと周囲にも多少の被害が出るからだ。
「んじゃ、魔族領を消し飛ばしてこっちに来てる連中の帰る場所を消し飛ばしておくか」
「言うことがいちいち物騒なのよねえ……しかも実行できるから怖いわ」
俺は魔石の山の三分の二ほどから魔力を吸い上げていく。
魔力を練って練って遠隔地とのゲートを開く。
「クリエイト・ヒュージゲート」
そしてすべてを消し飛ばす切り札を使用する。
「クリエイト・カー・ブラックホール!」
小さな黒点が魔族領へと撃ち込まれる。
「クローズ」
こちらへの影響をなくすためにゲートを遮断する。
――魔族領
とある魔族が気がついた。
「なんだありゃあ? ここにしちゃあずいぶん明るいな?」
となりの魔族も気がついた。
「なんか黒い塊が――」
ここで魔族領のほぼすべてが消し飛び、魔族の意識は消え去った。
――スタイン領
「ほう、おとなしく首を差し出す気にでもなったか!」
俺は魔族のわずかばかりの生き残りと対峙していた。
「いや、哀れなお前たちを仲間の元へと送ってやろうと思ってな」
「なにを言っている! 我々は貴様程度に……おい背後にある石はなんだ?」
「さあてね? 魔石「だった」ものだよ」
その時、背後に大きな闇が発生した。
「なんだあれは? 我々の領地からおきたようだが……まさか貴様!」
「さあ、お遊びも終わりだ」
俺は残りの魔石に手をかけて唱えた。
「メイルシュトローム!」
雷、氷、炎、水、すべてが吹き荒れ前方のあるものを土地ごと削り取っていく。
すべてが残骸となり、そこに生きている生物がいなくなったところで魔石はようやくすべてが石になった。
俺のとなりですべてを見届けていたフィールが言う。
「あんたには情ってものがないの? さすがに魔族が少し気の毒だわ……」
「所詮は人になれない化け物だよ、情けなんてものを持っていたら戦いは出来ない」
俺はまっさらになった大地を見て言った。
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