始まり-1

―――天空歴3000年・人地歴2200年。

 地球の小さな島、日本。

 アニメの文化や最新技術も発展していたその国の中部地方の山の中。

 一人の少年が―――――――――。

 リュックを背負って歩いていた。

 重さ20㎏はあるであろうそのリュックを背負った少年は、目つきが細く、特徴的な白色に一束の青髪がある少年―――九神くがみ 連十れんとである。

 深い針葉樹の森をかれこれ15日間歩いている。

「の、喉が~~」

 準備していた2リットルのお茶10本ももう飲み終えてしまっていた。こんなことになるとは、連十も想定外であった。

(もっ、もっと速くつくかと思ってた)

 目的地までのちゃんとしたルートも知らなかったので当然である。

 連十は言わば、方向音痴である。

 スーパーなどに買い出し(家のすぐ近く)に行けば、一定確率でまいごになり、一日中いえにかえれないこともあったほどだ。

 そんな奴が今まで住んでいた町から、徒歩で引っ越しているのだから仕方ない。

 どうして徒歩かというと、—――ぶっちゃけお金がなかったからである。そんな人間なのだから。

「……早くいかなきゃ死ぬな」

 一人でそう呟いて、また一歩、一歩と森を進んでいく。

―――数十分後。

「は、はくえて~(た、たすけて~)」

 先ほどまでのしんみりした感じは何処に行ったのか、連十は喉が渇きすぎて、干からびかけていたのだ。

 今日の最高気温は、約32℃。見た限り、日はもう頂点までたどり着いていたので、今がちょうどそれぐらいの気温であろう。

 森の中だけあって、木々が大体の日差しを防いでくれているが、それでもなおとてつもない暑さである。水をちゃんと飲めていない人間にとっては、まさしく地獄である。

(あ、あそこにオアシスが)

 森の中にオアシスがあるわけがない。

 連十は、幻覚を見始めており、

(あ~。川向うにたくさんのペットボトルが~)

 三途の川も見始めていた。

 そんな幸せそうな、幻覚を見て、目が耐えられなくなり、瞼を閉じようと―――、

 ピチャンッ!

 瞬間、急に目を覚ました。

「み、み、水の音おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 人類で、ここまで水の音を聞いて、叫んだものがいただろうか。

 疲れも吹っ飛んだのか、連十は、走った。これでもかというぐらいに走った。走り続けた。

 そして、走り続けた結果……。

 力尽きかけていた。

 水も飲んでいないこの状況で走り続けるのも困難であり、何より見つけたのは水ではなく、となく小鳥だったのだから。

(マジで死にそう)

 どんどん瞼が重くなる。連十は、これで終わってしまうのかと後悔していた。

 薄れていく意識の中で、連十は、ある思い出を思いだしていた。走馬灯である。

 それは、一人の女性との

 あぁ。守りたかった。約束。

 そんな後悔をしていた。そして次の瞬間空の上で何か光輝いた。

 仰向けになり、空を見上げる。

 そこには、一つの影があった。少女の影である。

(天使が迎えに来たのか?)

 連十は、もうあきらめて空にいってしまおうと思った。

 だがある異変に気付く。その影にはなかったのだ。

「へっ?」

 そんな間の抜けた声を上げていた連十は気付く。

 これは夢ではないと。

 空から猛スピードで少女が落ちてくる。これが現実ならばこのままだとあの少女は死んでしまう。

 その時自然と身体が動いた。自分の目の前で人が死ぬのを見るなんざ死んでもごめんであったからである。

 近くなる。

 近くなる。

 どんどん落ちてくる少女を、連十は、火事場のバカ力で受け止めた。体の一部分からメキメキという音が聞こえる。

「ッ!!??」

 あまりの痛さに倒れそうになるがすんでで踏みとどまった。幸い、骨は折れていないようである。

「そうだ!大丈夫ですか?」

 そして抱えていた少女を見ると、その少女は可愛らしい寝顔をしていた。

 その顔を見て、連十は、息の飲んだ。

 その少女があまりにも美しかったからである。薄い金髪のロングヘア。その整った顔立ちは、可愛らしい部類に位置している。

 一瞬見とれてしまったが、連十は、今さっきまでの自分の状況を思い出した。喉が死ぬほど乾いていた状況を。

(!見とれている場合じゃない!早く水を!)

 その時、突然、鼻に一滴。

 一気に大雨とかしていく。

「たっ、助かった~」

 連十は、安どの息を吐いた。


 


 

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