飛ばない俺から飛べない君へ 1
賢賢(たかけん)
昔話
―――西暦2025年。
晴天の空が広がる7月中旬。東京の渋谷には、約500人程度の社会人が群がっていた。
暑苦しい町の中を物凄い数の人が交差点を通っていく。まるで働きアリのようである。
集団恐怖症の人には、吐き気をもよおすかもしれないそんな光景。
毎日。
毎日。
毎日。
毎日。
そんな代わり映えのない景色が過ぎていく。
そして今日もそんな日が続くと誰もが思っていた。
ふと、一人の男性が立ち止まった。20代当たりの
就職して2年がたった今、スマホを片手に交差点を通って、編集者の仕事をまっとうしていた。
今日も自分の担当小説家に会いに行くはずだった。
彼が立ち止まった理由はほかでもない。上司と電話中にいきなりスマホがショートしたのだ。
「はぁ!?勘弁してよー!」
重岡はほかの人には、聞こえないぐらいの声で言葉を吐くと、スマホの電源ボタンを押して再起動しようとした。
しかし、スマホは―――反応しない。
「こ、壊れた~」
そんな気の抜けたセリフを吐く。そりゃそうだ。5年間も使ってきたのだから壊れてしまうことだってあるだろう。
そんなことを考えた重岡だが、すぐにある異変に気づいた。
「ぇ―――」
渋谷の交差点を通っていたほかの人たちも立ち止まっていたことに。
その理由は、スマホが反応しないということ。
「は!?充電、満タンだったぞ!」
「あ~!?俺のユリたんがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「ちょっ!?私のスマホおかしくない!」
そんな声が東京に響いていた。
しかし、混乱はそれでは終わらない。
―――大阪。
「おい!俺のスマホおかしいで!!!」
「ありえへん!!」
―――宮城。
「おかあちゃん。ケイタイうごかへんよ~」
「噓はだめよ~」
―――福岡。
「ご飯中にスマホは厳禁!!」
「いや優子。何か、スマホ反応せんで?」
混乱が日本中に、―――否、
―――アメリカ。
「Oh,Fa〇〇!!!」
「What!?」
世界最大の国、アメリカなどの、世界各国の国々にも広がっていった。
戻って、日本。
混乱がまだうずめいている東京。
重岡が不意にスマホの画面を見ると画面がずれていた。
突然の事に驚いたが、そこにはこう白く書かれていた。
『空を飛びたいか?』
「「「は?」」」
交差点すべての人たちが一斉に発した。
その意味の分からない言葉から、ほとんどの人が青だぬきを連想したが、なんか言ってはダメなような気がして誰も口には出さなかった。
そして、次の瞬間。
空が唸った。
激しい揺れ。眩い光が全世界を包み込んだ。
――――――これが約200年前の出来事である。
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