第109話 金環形邪蟲(メタルワーム)その1

さてショウマ一行は今冒険者組合にいる。


「ザクロさん、『冒険者の鏡』使わせて」

「いいよー、にゃはははー。

 そこの部屋、好きに使っちゃえ―」


冒険者組合は以前のボロ屋じゃない。

以前は一部屋しか無かった組合。

今は受付部屋以外にも別室が有る。

『冒険者の鏡』が設置されてる部屋も有るのだ。


ザクロさんは冒険者組合の受付。

いつもテキトーな人だけど。

今日はいつも以上にテンションがおかしい。

まるで酔っぱらってるみたい。


『野獣の森』からは一端退散してきた。

変な女性に文句をつけられたのだ。

“鋼鉄蛞蝓”は経験値ボーナス魔獣。

やはり回数制限があったのかも。

意味不明なコトを言ってた女性。

ショウマにクレームを言ってた事だけは確か。

逃げてきたのである。


ショウマ一行はけっこうな勢いでLVアップした。

ちょっとステータス確認しよう。

組合でステータス確認したら、午後『野獣の森』に又行こう。

経験値ボーナスステージ、回数制限リセットされてないかな。



名前:ケロ子

種族:亜人/従魔


冒険者LV21


攻撃力:330(+33)

魔法攻撃力:63

防御力:332

魔法防御力:200

行動速度:189(+19)


体力:682

魔力:399


職業

 闘士 ランク4

 武闘家・棒 ランク3


スキル

 特殊攻撃

  体当たり ランク3

  空中蹴り ランク2

  身体強化 ランク3

  鎧通し  ランク2

 

 種族特性

  毒抵抗   

  水中移動


装備

 『手甲 速度上昇(小)』

 『革マント 攻撃力上昇(小)』




ケロ子はついにLV20越え。

多分強い。

きっと強い。

絶対強い。



「凄いわね。

 もうLV21なんて。

 ケロコちゃん、いくつなの?」

「は、はいっ。

 16歳ですっ」


「16歳でLV20越え!

 アタシも冒険者稼業長いけど、

 始めて聞いたわ」


「多分最年少LV20到達、世界記録よ。

 記念に呑まない?」

「ありがとうございますっ。

 でもアタシお酒はあんまりっ」


あのどちら様?

『冒険者の鏡』がある別室。

そこにいつの間にかショウマ達と一緒に入って来た人がいる。

女性だ。

革鎧で武装してる。

その上に上等そうなコートを羽織ってるけど。

すでにコートを半脱ぎ。

だらしない格好が少しイロっぽい。

さらに革鎧が軽くセクシー。

肩までは覆っている鎧。

その先は網タイツ風、革紐が巻き着いているけど肌が見えてる。

足も同じだ。

ホットパンツ風の腰鎧。

その下の腿にもタイツ風に金属状の鎖が巻き着いてる。

もちろん隙間から素肌が見えてる。


キタ!キタキタ!セクシー女戦士キター。

もちろんショウマの知ってるゲームやアニメではもっとえちえちな格好の女性キャラも多かった。

でもこの世界ではそうでもない。

無骨な鎧をみんな着込んでるのだ。

目の前にいる女性は今まで見た冒険者の中では最も露出度高い人だ。


従魔少女達にもさせたい。

えちえちな格好させたいのだ。

でもそうもいかない。

だって従魔少女達は迷宮に行ってるのだ。

実戦なのだ。


アウトドアに慣れている人なら半袖シャツは避ける。

人間の皮膚は弱い。

植物の葉っぱが触れるだけでもすぐ切れる。

枝が突き出てる茂みなんか通ろうものなら擦り傷だらけになるのだ。

擦り傷からはすぐ病原菌が入ってくる。

薄い布地を纏うだけでも相当違う。


従魔少女達は『野獣の森』を進んでいるのだ。

太腿の露出はさせられない。

森を歩くだけじゃないのだ。

魔獣に襲われる。

“暴れ猪”は牙を前に突っ込んでくる。

“飛槍蛇”は槍に似た尻尾で襲ってくる。

鎧付けてなきゃ一発で大ケガ。


「ご主人様、初対面の人に向かってエッチすぎる顔になってますよ。二の腕や、太腿見る目があからさま過ぎて引くですよ」

「違う、違う違う、ちぃがぁうぅー。

 冒険者さんにしては危険な服装してるなと思ってただけだよ」


「装備が気になる?

 まあ、もう引退した身だからね。

 癖でまだ鎧は身につけてるけど。

 もう迷宮には行かないわ」


女性は言う。


「マリーさん。

 いつの間に聖者サマのところにー」

「ザクロさん。

 この人でしょ、聖者サマ。

 紹介してよ」


女性はマリーゴールドさん。

別の冒険者組合の支店長らしい。

亜人の村が新築したと言うので祝いに来たらしい。

すでにお酒の匂いがしてる。

ショウマ達にも勧めて来たけど。


「いや、我らは酒は遠慮する。

 午後も迷宮探索する予定なのだ」

「またの機会にご一緒しましょう。

 今日は午後も迷宮探索に行く予定なのです」


みみっくちゃんはちょっと惹かれてたみたい。


「ライスワインですね。聞いた事有るです。冷やして呑んでも軽く温めて呑んでも違った魅力が有るらしいですよ。試してみたいですね」

「みみっくちゃん、『野獣の森』探索に行くんだよっ。

 今はお酒はダメだよっ」



午後には『野獣の森』にもう一度行く。

ショウマ達はお昼ご飯。

家でご飯食べてもいいんだけど、どうせだから新しく出来た食事処に行ってみる。

温泉施設の近くに造ったのだ。

亜人の村の人達も少しづつ利用してるみたい。

昼は軽食中心、夜はお酒も出す場だ。


「聖者サマ、どうされたんですか」

「様子見だよ、気にしないで」


メニューはまだそんなに豊富じゃない。

ランチは3種類から選ぶ形式。

A定食、パンとスープ、デザート付き。

B定食、シチューライス。

C定食 温麵。


従業員は攫われて戻って来た女性。

ショウマを見て少し舞い上がってる様子。


「あの聖者サマ

 以前おっしゃっていたメニュー。

 作ってみたんです。

 試食していただけますか」


ええと、なんだっけ?

色々テキトーに言ったような気もするね。

カレー、ラーメン、コーヒー、プリン、チョコレート。

久々に食べたいなと思うモノを羅列。

こんなカンジと伝えた。


女性が持ってくる。

これはカレーかな。

シチューライスにトウガラシを混ぜ込んだカンジ。


一口食べて、ハチ子はむせかえってる。


「イタイイタイ、口の中が痛い。

 おのれ、王を攻撃するつもりか」

「うひゃー。

 タマモの口の中が熱い。

 なにこれ、おもしろい」


タマモはむしろ楽しんでるみたい。


「ショウマ王、平気なんですか?」


ハチ美も唇を真っ赤にしてる。

うーん。

辛いモノに慣れてないのかな。


日本の翔馬は辛いのに慣れてる。

コンビニのカップ麺も最近は工夫が多い。

全部入れると激辛になりますという別添えの調味料が付いてる。

翔馬はあーゆーの割と全部入れちゃう。

それに比べると大したコト無い。


「食べ慣れない人はムリに食べない方がいーよ。

 お腹壊しちゃうからね」


「すいません、すいません。

 辛くし過ぎましたか。

 唐辛子の量、減らします」


従業員さんは恐縮してる。

いや、むしろ。


「これ、お豆腐入れて。

 後料理用のお酒」


それで美味しい麻婆丼になりそう。



さて昼の時間も過ぎた。

ショウマ達はもう一度『野獣の森』に向かう。

白いモヤっとしたゲートから中に入る。


「あの娘もういないよね。

 良かった。

 クレーマー、イヤだよね」

「はいっ。

 クライマー、イヤですっ」


クレーマーの意味を知ってる人が居たら、オマエの事だオマエとツッコンでるだろう。

残念ながらケロ子にはショウマにツッコミを入れると言う選択肢は無い。

さらに何故か登山好きな人をディスってる。



『LVが上がった』

『ショウマは冒険者LVがLV23からLV24になった』

『ミミックチャンは冒険者LVがLV20からLV21になった』 

『ハチコは冒険者LVがLV19からLV20になった』 

『ハチミは冒険者LVがLV19からLV20になった』

『タマモは冒険者LVがLV14からLV15になった』


よっしゃー。

経験値ボーナスステージ、リセットされたみたい。

何体までオッケー?

イケルとこまで行ってみよう。


ショウマ達は“鋼鉄蛞蝓”をドンドン狩る。

スキルも試してみる。


さっき冒険者組合でもう少し従魔少女達のステータス見たかった。

『冒険者の鏡』のある部屋にマリーゴールドさんが乱入してきたので逃げたのだ。

だから初対面の人と話すのニガテなんだって。

少しセクシーな大人の女性。

マリーゴールドさんとザクロさんは昼間から酔っぱらってた。

酔っぱらいは危険、逃げるに限る。


ショウマ達は『野獣の森』の魔獣とも戦っている。

“鋼鉄蛞蝓”だけではない。

だって向こうから襲ってくるし。


“火鼠”“飛槍蛇”。

楽勝なザコ魔獣。

ハチ美が呪いの言葉を吐きながら矢を放つ。

「おぉのぉれぇ。

 鎌鼬ぃ、殺す殺す殺すぅ」


“妖狐”“獅子山羊”“一角兎”は逃げてく。

タマモが反応する。

「えいっ、動くヤツ捕まえた」

“一角兎”に噛みつこうとする。

狩猟本能がうずくのか。

あーこれこれ、逃がしてあげなさい。

「チェー、分かったー」


ふーん、“一角兎”か。

ショウマの従魔にしたならば。

もしかしてウサ耳少女完成?

ウサ耳いいよね。

バニーガールの衣装も着せたい。

でも角もあるのか。

ちょっと余計。

ケモ耳プラス角。

バランス、イマイチ。


タマモからはキツネ耳が生えてるのだ。

白い髪の毛から覗く、茶色い耳。

時々、ヒョコッと動く。

メッチャ、キュート。


“森林熊”とかゆーヤツも倒す。

体毛が木のような迷彩。

見つけにくい魔獣。

ハチ子が髪の毛で見つける。

「我が槍の一撃を喰らえ」


まーでも今回は“鋼鉄蛞蝓”が目当て。

ハチ美の超感覚を頼りに次々倒す。


みみっくちゃんに魔法の使い方伝授。


『ひょーげーき』


時間をかけ魔力を込める唱え方。

同じ『氷撃』でも威力が上がるのだ。

普通の『氷撃』一撃じゃ倒せない“鋼鉄蛞蝓”。

魔力を込めたら消えて行った。


「これはキツイですよ。出来ない事はないですけど、魔力一気に使っちゃいます。

 何回か使ったら、あっという間に魔力切れ。実戦で使うのはムリがありますですよ」


みみっくちゃんがフラフラしながら言う。

魔力切れは辛いのだ。

“鋼鉄蛞蝓”が消えてLVアップしたら治ってた。


さてそろそろ。

ショウマLV27

ケロ子LV25

みみっくちゃんLV24

ハチ子LV24

ハチ美LV24

タマモLV22

一行はパワーアップ。


こんな簡単にパワーアップ出来ていいのかな。

いいのだ。

簡単な方がいいに決まってる。



「おまえら、おまえらおまえらー」


あ、上限来ちゃったかな。


蛇のお面付けた女性が震えてる。

拳を握りしめフルフルしてるのだ。


「あ、ゴメンゴメン。

 もう上限かな。

 今日は帰るよ」


「おまえら、アタシがお昼寝してるうちに。

 よくもやってくれたなー」


お昼寝してたんだ。

じゃあしょうがないよね。

お昼寝気持ちいいもんね。

そういや学校に午睡の時間取り入れるとか言うのはどうなったのかな。

どうせなら働き方改革で会社も全部取り入れちゃえばいーのに。

余計な情報は覚えてるショウマだ。


帰ろうとするショウマ達だが、蛇お面の女性は怒り心頭の様子。


「おまえらー。

 許さないからな。

 来い、“金環形邪蟲”(メタルワーム)」



【次回予告】

大地を割って現れる。巨大な蚯蚓。“金環形邪蟲”。大地を酸で溶かし、地形さえ変えてしまうと言う。そんな災いの魔獣が現れる。

キシャァシャシャシャシャァァァァー。魔獣の身体が擦れ合う金属音が鳴り響く。酸の唾液が振り撒かれる。森の木々が崩れていく。草花が溶かされる。『野獣の森』の魔獣、“火鼠”“一角兎”“鎌鼬”も逃げていく。

「…ご主人様~、何したですか?何したですか、何したですか~。いや、言わなくていいです。みみっくちゃん分かってます。」

次回、“金環形邪蟲”暴れる。 

(ボイスイメージ:銀河万丈(神)でお読みください)

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