<外伝> 騎士の誓い2

「おーい。そんなのろのろ歩いてたら日が暮れるぞ」


 キールはルナの手を引きながら後ろからのそのそとついて来るユアンに声をかける。


「うぅ寒い。もう歩きたくない──」


 ユアンは何を詰めているのか大きなリュックを背負いながら文句を言いつつ歩いている。


「キールまだか」

「もう少し上流のほうがいい」

「ユアンお兄様、もう少し早く歩いてください」


 ルナにまで怒られているユアンに思わず吹き出す。これではどちらが年上なのだか。


「ほら見えたぞ」


 突然目の前が開けそこに川が現れる。


「よし、釣るぞ」


 持ってきた釣り竿をセットする。ユアンはルナと一緒に川の中に石を積んで罠を仕掛ける。

 そうしてしばらくすると数匹のササケラが取れた。

 それを途中で拾ってきていた木の枝にさして焚火で焼く。それと何を持ってきていたと思ったら、ユアンはリュックから鍋と調味料を取り出すと、ササケラを入れスープを作り出した。

 出不精なくせに、本当に食べることに対しては妥協しない幼馴染である。


「あぁいい匂いだ」


 ユアンのお腹がグーと返事をするように音を立てる。


「食い意地が恥ずかしいですわ、ユアンお兄様は」


 呆れてそう言ったルナのお腹も、グーとユアンに負けないぐらい大きな音で鳴った。ルナが真っ赤な顔を両手で隠す。


「そろそろいいんじゃないか」


 涙を流しながら笑い転げていたキールが、ササケラの刺さった串をとって二人に渡す。


「「「いただきます」」」


 三人でササケラを堪能する。


「はあ、おいしかったです。ルナは満足です」

「あぁ、このままここで眠りたい」


 ユアンが腹をさすりながらそんなことを呟く。


「ほら、そんな暇はないぞ。片付けしたらもう帰らなくちゃ」


 この時期の日の入りは早い、日が傾いたら暗くなるまであっという間だ。


「わかってるよ」


 そういってユアンがノロノロと片づけを始める。しかし「ごめん、ちょっと」というと、急にお腹を押さえながら林の中に入っていく。


「もう、お兄様ったら本当にはずかしい」


 ルナが頬を染めながら口を尖らす。


「まあ、生理現象はしかたないさ」


 そう言って、残り火を足で消していた時である。


「グルルル」


 風に乗って微かに聞こえてくる低いそれに


「ルナ、まだお腹すいてるのか?」


 腹の虫ではないと頭のどこかではっきりとわかっていたが一応確認する。


「そんなわけありませんわ」


 しかしルナは最後まで言葉を続けることなく「ヒィ」と小さく息をのんで、キールにしがみついた。


「グルルル」


 再び聞こえたそれは、先ほどよりはっきりと低い唸り声として耳に届く。おそるおそる唸り声のした方に顔を向ける。

 川を挟んでちょうど反対側にそれはいた。

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