マイナスの感じさせ方、そこからの上げ方(2021/1/27)
前回冒頭で書いた「入れ替わりに推理風味を交えたもの」は、少しずつ書き進め始めました。現在、1行40字で173行。4000行を目標にうまくまとめて、賞への応募を考えています。
しかし、書き始めてみるとやはり悩ましいことは色々と出てきます。
そこから派生して考えたことについて、少し述べてみようかと。
まず、一巻完結の物語として、やはり起伏は必要です。
そして入れ替わり物語で起伏をわかりやすく示すのは、主人公の精神状態ということになるのではないかと思います。
読者に読み進めたいと思わせるためにも、読後感を良くするためにも、マイナスからスタートしてどんどん上がっていって最終的にはプラスになる形が望ましいと考えられます。最後にプラスになるはずがマイナスになってしまうというのは、ダークな話やホラーのバッドエンド、あるいはクズ主人公がうまいことやろうとして……のパターンですね。
しかし、入れ替わりでマイナスにするというのが、あれこれ考え始めると意外と難しいかもとも思わされます。
かつての『おれがあいつであいつがおれで』などの時代は、「自分が自分でなくなること」も「異性になること」も、明白なマイナスとして問題なかったのではと思います。しかし今や、現世に絶望したネット小説の主人公は他人に転生することをむしろラッキーと考えていそうですし、TSの発想も広がりつつあります。
まあ、一般的な男女を主人公とするならば、それらを気にしすぎる必要はないでしょう。元の自分・元の性別に戻る方がいいと思う者を主人公にすればここに問題は生じません。
さて、そこからのプラスへの転じ方も、意外と難しくはあります。
なぜなら、ストーリー途中のプラスの積み重ねと、最終的なプラスのあり方は、オーソドックスな――最後には元に戻るタイプの――入れ替わり物語においては別枠で考える必要があるからです。
男子が女子の身体で凛々しく雄々しく、または女子が男子の身体で細やかに配慮したり女子に優しく接するなどして、活躍する。逆に、男子が女子の身体や生活に、あるいは女子が男子の身体や生活に、なじむ。それらは一種の成長ではあり読者目線ではプラスを積み重ねていくことにもなるでしょうが、元に戻った際にはしばしば関係なくなるものです。
それらが無駄とならない理屈付けとしても重宝するのが「相互理解」という発想ですね(テーマとしても大切ですが)。仲が悪かったり異性への想像力が足りなかったりしていた男女が入れ替わることで、相手の感覚や事情を肌身で知り、元に戻ってからも相手を気遣えるようになる。入れ替わった同士による恋愛の発生や成立もこれに近いかも。
それとも多少関係しますけど、冒険や推理の要素が強い作品の場合は、元の身体では知り得なかった情報を入手するというのも、積み重ねつつ元に戻っても失われないプラス要素になるかなと。入れ替わりとは直接関係ない事件を解決するというのもよくある趣向ではありますが、入れ替わりが添え物になりがちでもあります。
元に戻れないタイプの作品なら、今の身体と人生に順応していく(または自分らしさに沿って変えていく)ことがそっくりそのまま結末でのプラス要素に加算できてしまうわけですが。
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