キャラクターの変容の度合い(2020/11/27)

 入れ替わりに限らず、TSやTFにおいて、姿などが変化してしまったキャラクターは内面的にも変化していきがちです。

 日々、入れ替わった女子の制服を着てその女子として過ごす中で、元少年にも精神的な変化はあるでしょう。競走馬と入れ替わったなんて少女も、人間だった時とまったく同じではいられないはずです。

 商業作品においても、女性的な着こなしや振る舞いに次第に慣れていく元少年とか、元の自分の身体を可愛いと思ってキスしてしまう元少女とか、背が高い状態が当たり前になっていく元女性とか、そういうシーンが見られるとたまらないものがあります。

 これらのジャンルにおいて、ここはまさに肝となる部分で、作者も読者もひとかたならぬこだわりを持っていることでしょう(だからこそ、そこに凝っていない、変化したキャラが平然としていて内面の変化など何も生じていないような作品は「平然系」「薄い」などとあしらわれるわけです。私もその手の話とわかると読む気はかなり失せます)。

 ネットで感想のやり取りなどしたことのある作者様は何人かいますが、この点において特徴的な三人の方の方向性について、少し書いてみようと思います。


 TF専門のMさんの場合、まったく別の存在に変わってしまう話が非常に多かったです。普通の女性が異形の存在になり、人間とは異なる価値観で、時に人間を害して生きるようになる。かつての記憶はあっても、それは単なる知識に近く、今現在の人倫に反する行動を妨げることもない……。

 敢えて名付ければ、置換型ということになりそうです。当人に感情移入するよりは、外から眺めてその悲哀に感じ入るという読み方になるかもしれません。


 TFからTSまで幅広いGさんは、むしろほとんど変わらないことを好んでいたように思います。どれだけ元の姿からかけ離れてしまっても、女性だったことあるいは人間だったことを覚えている。変わり果てた姿で日々生きることはそれ自体が恥辱であり、しかし肉体的には次第に順応もしていくわけで、それ自体が新たな屈辱でもあり……。

 維持型と呼べるでしょう。平然系と違うのは、変化に対する嫌悪や恐怖をしっかり描いている点です。被虐嗜好の読者が感情移入して読むには絶好のタイプだと思います。


 ほぼTSのTさんは、かなり多彩な変容を描いています。それでも敢えて共通点を見出すとしたら、どこかは決定的に変わってしまうというところかなと。賢かった元少年が、成績の悪い少女の身体で成績を落としてしまう。元少女が女性だった時の感覚を忘れてしまう。そんなシーンが印象的に描かれることが多いです。

 一部改変型と言えるでしょうか。変化の物語を喪失と獲得として捉えれば、これが王道になるかと思います。


 なお、私自身の好みを言えば……増設型ということになるかと思います。喪失はなく、成長の一種。

 元からの自分は失ってしまわず、でも現状に適応していく。今の身体に沿った、新たな自分も生まれていく。元に戻った場合にも、それは消えない(冒頭の例で言えば、少年は少女の感覚を覚えたまま暮らしていくし、少女は馬として生きた日々を忘れてしまわない)。

 ちょっと都合のいい話かもしれませんが、こういう目に遭ってしまったキャラはけっこう面倒なことにはなっているわけで、これくらいでちょうどいいんじゃないかと思っています。

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