少年になっていく元少女(2020/11/10)

 書くほどに、一般性から遠ざかって、個人的な趣味嗜好性癖の話になっていくなと感じます。まあ、こうなるだろうなと思ったからこそ、ジャンルとしては「創作論」ではなく「エッセイ」にしたわけですが。


 先日の続きとなりますが、元女性――というか、元少女について書いてみます。

 私は、基本的にTS少女(元少年)の相手としてはTS少年(元少女)が似合っていると考えていまして(例外は山ほどありますが)、その意味でも両者ともに登場できる入れ替わりタイプの物語が一番しっくり来ています。

 そして、元少年が少女になっていく姿――トイレや着替えにやがて慣れていって、月に一度のことも受け入れ、今の自分が女子だと自覚していく――を良いと感じるように、元少女が少年になっていく姿も良いと感じます。

 立って用を足すのに慣れて、はねるから座ってやりなさいと今の家族に叱られるとか。毎朝の生理現象も当たり前になるとか。高い身長や重い体重、大きな手足や低い声に違和感を覚えなくなるとか。食事の量が増えるとか。女子に性的な魅力を覚えるようになるとか。

 少女から少年への変化に強い興味を覚えるというのは、私がTFも好きだから感じることかもしれませんね。TFにおいては、犬になった少女が四つん這いで歩いたり、馬になった少女が人を乗せたり、カエルになった少女がぬめった身体でゲコゲコ鳴いたり、ドラゴンになった少女が火を吐いたりします。それらと方向性としては同じ、美しい存在をぐちゃぐちゃにしてみたい・本来高いところにある存在を地べたに下ろして貶めたいという嗜好なのだろうと思います。

 少女→少年の場合はさらにもう一つ、本来ならどこまで行っても他者である「少女」を、自分(かつての自分)と同類である「少年」にしてみたい、思春期の違和感やら悩みやら性的な問題やらを味わわせてやりたい、という感情もあるような。


 そこから入れ替わりに話を戻しますと、やはり男女入れ替わり――それも両者が同年代のもの――が、そういう流れを描くには一番ふさわしいようにも思います。

 何せ、少年になって戸惑う元少女の隣には、少女になって戸惑う元少年がいるわけで。衝突しながらも協力し合い、やがて相手の立場を理解していき……というのは、恋愛物語の基本構造でもあります。

 その先は、「元に戻れる/戻れない」「元の『自分』に恋愛感情を抱く/抱かない」というそれぞれかなりの字数をかけて語りたい選択肢があるわけですが、「戻れない・抱く」となった後にいずれ迎えるのは結婚式。かつて花嫁になるつもりでいた、ウェディングドレスを着るつもりでいた女の子が、今やウェディングドレスを着た花嫁となった『かつての自分』を妻として迎える夫になっている。そのシチュエーションの倒錯性はかなりのものと思っています。


 次は、上で触れた「元に戻れる/戻れない」を中心にした話題を考えています。その後は、「『元の自分』との関係性」についても。

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