元女性の視点(2020/11/6)

 私は幼い頃からTSとTF両方が好きだったのですが、どうもTSだけが好きな人々とは少し感覚が違うのかなというのは、前々から感じています。

 私にとっては、女→男のTSも守備範囲ですが、どうもそういう感性はTS界隈においては少数派であるらしい。

(※余談ですが、「女→男のTS全般」は「男体化」と呼ばれることが多く、私もこの語を使うことが多いです。「女体化」は前回のTS分類で言えば「変身」、それも元の身体の特徴を濃く残した性別変化のみを指すのに、不思議な話ですが)


 TFでは少女→動物や少女→モンスターというパターンはまったく珍しくなく、有名な童話では『白鳥の湖』の白鳥になったオデット姫や『コウノトリになったカリフ』でフクロウになっていた姫などがいます。それらは言うなればヒロイン枠ではありますが、少女漫画などでは主人公的な視点人物が変身することもよくあります。

 TF小説の同人アンソロジーに参加した経験がありますが、そこでも少女が主人公となり変身していく作品は、私が書いたものも含め多々ありました。

 私にとって変身する・させられるというのは、基本的にひどいことであり(楽しいこととして描く作品ももちろんありますけど)、主人公を客観的に捉えれば嗜虐、主観的には被虐となるかと思います。主人公をけだもの・化け物に変えて貶めたい、あるいはそんな悲惨な主人公にとことん感情移入していじめられたい、そんな気持ちが読むにも書くにも入り混じっています(私の場合は、です)。


 ともあれそのようにTFで少女視点の変身物語を楽しんでいる私としては、TSでも少女が少年になっていくような話を楽しみたいと思っています。しかしそれは、なかなかない(数少ない例外が、短編漫画『かすみ♂』など)。

 ただ、入れ替わりものならば、元少年がいるのと同時に元少女もいるわけで、それを期待できなくもない。

 ここで「できなくもない」という書き方になってしまうのが寂しいところで、実際にはそう毎度都合良くもいかないわけですが。

 少女の身体に少年の心というのは、すごく映えます。男言葉を使ってもがさつな行動を取っても、むしろ凛々しくなるくらい。逆に、演技や順応や教育や強制で女性的な言動をする羽目になっても、内面を知る読者としてはギャップを大いに感じられておいしい。また元から女性的な性質の少年が少女になって内面に沿った行動をするのも、それはそれで。

 一方の、少年の身体に少女の心というのは、どうにも難しい。いろんなことで読むこちらにとっての当たり判定が諸々生じてしまい、あっという間にゲームオーバー。難易度が高いのは、商業作品を読んでいる時にも自分で書いてみる時にも感じています。ただ、そこをうまく乗り越えられると、なかなか悪くない光景が広がっているようにも思います。

 でも、なんでそんな過酷な隘路をわざわざ行かねばならんのだと、普通は感じてしまうものかもなとは、今書いていて思いました。それに男→女のTSをひたすらプラスとして認識しているならば、女→男のTSはそんな方にとっては「ひたすらマイナス」でしかないわけで。

 そういう方々の認識すらも変えられるような作品を、いずれ書いてみたいものだと思っています。


 ……今回は、ちょっと読者や作者の目線での話に終始してしまった感じがあります。元女性キャラがどう魅力的か(というよりは、どんな辺りを私が魅力的に感じるか)の話なども近いうちにできれば。

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