い.『意思』とは

「う……ここは?」


 カッと眩しい光が一瞬だけ拓真の視界を奪った後、彼が立っていた世界はこれまでとそう変わらないものだった。ビルが立ち並び車両が忙しく行き交う国道。ショッピングセンターの正面出入口に何十人と立っている集団の1人に、拓真はいつの間にか混じっていた。


「なんだ?」

「どこだここ?」

「……今回はどうなるかな」


 集団はそれぞれ違う反応を見せ、困惑する者が大半だったが、ハチマキを頭に巻いている黒髪の男は冷静に状況を観察している。

 そもそもこの人数が出入口を塞いでいる事は迷惑極まりないが、不思議と通行人は気にもとめず避けて通っていた。


「よーし皆揃ったね。ここのエリアで前回から残ってる人は1人だけだし、最初から説明するね」


 突如上空にスクリーンが出現、愛翔の可憐な顔が浮かぶ。集団の中からは「俺達を集めてどうするつもりだ!」など抗議の声が多数上がっていたが、愛翔が望遠鏡を握ると彼らは倒れ込み秒も経たない内に動かなくなった。当然周りの者達は怯え、言葉を発する事はなくなる。


「反抗してくる人はこうなりまーす。さっさと説明するから聞いててよね? あのね、そこは現実世界じゃない。電子のデータで構成された……プログラム上の世界だね」


 ここまでは拓真もなんとなく予想は着いていた。ヘッドセットを装着させられたのだから。


「それで君達にはこれから、ある事をしてもらいます。とっても簡単」

「……」


 黒髪ハチマキの男の顔が強張り、睨んではいるが口出しはしていない。何か言いたげな表情を見せるだけ。


「出されたお題に『選択』をするだけ! そうしたら君達の中から『最善』1人が生まれる。『最善』には最高の待遇をしてあげるよ。でも『最悪』も1人出てくるから……まあ、そこら辺は察してね」


 拓真は忠告通り察してしまった。多数の人間がここに集められ、『選択』を迫られる。思わず彼は思った事をそのまま口に出した。


「『最善の選択肢』と『最悪の選択肢』は……実際の人間が取った行動から選ばれていた!?」

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