そ.『創造』とは
全くもって理解できない発言。“命を落とした”ならば今こうして望遠鏡を覗いている拓真と、その先で死亡扱いされている拓真が同時に存在する事はおかしい。
『へぇ……第3の選択肢について調べた結果、色々あって愛翔って人に利用されて。最後には──』
発言と光景は、唐突に終了した。望遠鏡は無理やり後ろから引き剥がされ、拓真の視界は澄み切った星空。しかし背中で感じられるとてつもない悪意に怯え、頭を動かす事は叶わなかった。
先程の『最悪・最善の選択』がどんな未来を表していたのか、拓真はようやく悟った。ここに来た時点で、もはや手遅れ。
「あ〜こんなケースは初めてだね。私の名前が出るなんて……しかも君がもう1人。私も訳が分からないよ」
変わらないふわふわとした声色。けれどそのふわふわした雰囲気が、逃げ場を無くす程に包み込んでくるのだと拓真は感じ取った。
『最悪』と『最善』が同じだった理由としては、どうあがいても逃げられないから。現に校舎へと繋がる扉には鍵がかけられている。拓真が望遠鏡を覗いている最中、愛翔が素早くこなしていた。
「『第3の選択肢』について研究してるってのは本当。私達の創造的な“ショー”の邪魔になっちゃうからね。どうにかして『第3の選択肢』を無くしたいんだ、皆も最善を選んだら良いのに」
「……っ!」
拓真は動いた。振り向いた。相手は女。申し訳ないという気持ちは持ちつつも、突き飛ばしその隙を突いて屋上から飛び降りようと考えた。
だが拓真が愛翔の方を向いた瞬間、飛んできた攻撃はとてもシンプルなもの。望遠鏡による殴打。拓真の頭部全体に衝撃が行き渡り、あっさりと意識を失う。
「この望遠鏡は【フライング・アウェイ】って呼んでる。“未来が見える”んだよ。正にフライングだね……って、もう聞こえてないか」
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