き.『共有』とは
「おかしいね……立ち去った後の事は何も見れないの?」
愛翔は顎に指を持っていき、悩んだ様子を見せ質問する。頷いた拓真はその場から動けずにいた。
「だったら『第3の選択肢』! その望遠鏡覗いてみたら?」
「や、やっぱりそうですよね。覗いてみます」
中途半端な所で『予見』が途切れた前例は、拓真の人生では今まで1度も無かった。それに映像がリピートされる間隔も短い。不信感を覚えてはいたが流されるまま望遠鏡に右眼を近づける。
「とりあえず街の方を先に見て、後から空を見てみます」
光り輝く街並みにレンズを向け、拓真は適当な人間を探し始めた。赤の他人を無断で観察する罪悪感もあったが愛翔の頼みであり、“choice・chase”の頼み。お礼も確約されていたので、断る理由がなかった。
すると、横断歩道を渡る直前で立ち止まった1人の男性が彼の目に映った。続いて2つのスクリーンが表示される。『選択』は本人以外の人間には見る事は出来ず、プライバシーは保護されていたがこの望遠鏡の前では無意味。注目する1人の人間の『選択』を最後まで観察できる代物だった。
「勝手に共有……覗き見しちゃうのは悪いと思うけどね。私もう慣れちゃったんだ」
愛翔が話すが、同時に足音も鳴り少し離れていくのを拓真は感じ取った。
「あ……どこ行くんですか?」
「気にしないで。もう終わったから」
思ったよりも早く返答があり、勝手に去っていくのではないと拓真は安堵する。望遠鏡に意識を戻すが、特にこれと言って異常や異変は見当たらず、すぐに顔を離れさせ愛翔へと向いた。
「確かにこの望遠鏡すごいですけど、何も変わったことは」
「まだ終わってないでしょ?
愛翔が顔を近づけ、人差し指で拓真の腕をつつく。異性に弱い拓真はすぐさま従い彼女に背を向け空に望遠鏡をかざした。
「空を見たら何か変なもの見たって言ってましたけど……俺の場合何かありますかね」
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