そ.『双頭』とは

「もしかしたら本当だったのかもな」


 帰宅した拓真は、コンビニにて発行したチケットを右手で揺らしながら振り返る。例え偶然だったとしても、彼にとっての幸福が訪れたのは事実。


「これからも試してみて……結果良かったら続けてみるか」


 気楽な今後への選択。命に関わる事故が起こる危険性もあるにはあったが、1度こうして快感を手に入れた人間はそう簡単に考えを変える事はできない。



 ~翌日~


 大学の食堂にて、拓真は1人スマホ片手に昼食を摂っていた。前日の『選択』について更に調べるため検索エンジンを起動、“第3の選択肢”と入力した。

 1番上に表示された、個人が開設したブログに興味は惹かれ、彼の人差し指が無意識の内に触れる。


「第3の選択肢を選び続けた日記……?」


 開いたページはその日記の途中部分だったため、拓真はそのブログのトップページへとジャンプした。

 しかし日記の最終更新日は半年ほど前。最後に投稿された日記を開くも、散歩の最中に自販機でコーラを買った、というありふれた内容でため息が吐き出される。


「ん?」


 画面下部の関連記事に視線が誘われる。日記とは違い、『選択の白』を研究する11人で構成された組織“choice・chase”についてのもの。

 予見の正確性や頻度、法律関係なども扱い現在の日本にとって切り離せはしない重要な人材だ。


「確か“choice・chase”の1人はこの大学の生徒だって聞いたけど……それも特に優秀なツートップ。『双頭ダブルヘッド』って呼ばれる2人。その内の1人がこの大学に」


 彼の中の興味は増していた。


 もしかしたら俺は第3の選択肢を選んで2つの幸福を手に入れた生き証人として、色々と認められるかもしれない。彼らに貢献できて、有名になれるかもしれない。


 そう考え他のブログやサイトに掲示板を片っ端から調べ上げていくと、他に“第3の選択肢を選んで幸福を手に入れた人間”がいない事に彼は気づいてしまった。既に昼は終わろうとしていたが。


「後で行ってみるか……『双頭ダブルヘッド』に会いに」

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