人類の牙
テスト終わりました。
「二つの意味で」とかではないです。
------------------------------------------------------------------------------------------------
閃光が消え、『無血』の姿は消えていた。
「『
どこからか声が聞こえる。
空が曇り、雨が降り出した。
いや、違う。
その一粒一粒が
俺は
今決めた、俺は
別に『無血』が悪意を持って、俺を利用しようとしているとは思っていない。
ただ、彼女は危険だ。
こんな消去法で選ぶものではないと思うのだが、彼女は考え方が極端すぎる。
それに対し、『無血』は完全にやめて良いと言った。
今なら分かる、『無血』が俺に敵対した者を全て殺さずには置かないのと一緒で、俺も努力のし過ぎと言う奴だったのだろう。
この数週間の休暇でわかった。
今、俺が
3キロ程先で火災旋風が巻き起こった。
闘技場の時よりも何倍も高い。
俺に伝えるための
かかった時間は約二分間、神の自覚の影響だろう。
「
飛び蹴りの様にウィンドウを蹴って停止する。
「……どこだ、居た! 」
二人は戸惑った様子で立っている。
「ねえ、
体の震えからか、鎖鎌のじゃらじゃらという音が鳴り止まない。
「僕ノ異能力ガ無効化サレマシタ」
彼女の問に答えたのはしかし『無血』だ。
俺の真後ろで蛆虫が集まって人の形を作っていた。
「コノ火災旋風ハ、僕ノ作ッタ偽物デシタ。ソノ二人ハココニハイナカッタ。デスガ
しかし、ここで俺はどういった行動をとればいいのだろうか。
正直言って俺は戦いたくなんてない。
「そいつは人類の敵だ、だが
そして頭を下げる。
敵の前で目線を外すというのは素人の俺でも分かる危険行為だ。
「……ここまでずっと黙っていて済まなかった。確かに吾輩は初めから君がどういう存在か知って、それを言わずに近づいた。自分についても伏せた状態で。だが、我々『ヘルシング社』についてくれて、君をひどい仕打ちを合わせたり周りの人間に被害を出したり、そういったことは一切しないと約束する。……どうか信じてくれ。━━━━━━と言うのが上から言えと言われたものでな。
それに、もし会社が君に敵対しても吾輩は君の仲間であり続ける。これは個人的なものだ」
……。
「
良かった、やっぱり
この世界の神である俺には彼女の考えている事が少し分かる様だ。
俺はこの数週間を共にした、俺の事をきっと一番大事に思ってくれている存在に。
俺の唯一人の信者、『無血』の方に振り返る。
黒い宇宙の闇に通じる
窓が開いた。
人の理解を超える、理解してはならぬ
「
「……この世界はどうなるのですか? 僕やその猫又は異世界の存在、夢が終われば目覚めましょう。……ですが、そのハーフエルフは? ご自分の気まぐれで救った命を、また気まぐれで見捨てるのですか? ……神とは、アザトースとは本来そんな存在です。ですが貴方様は違うはず」
「
「……でも」
「あの時、俺はあれだけ格上の飛角を倒したんだ。……ちょっと恩着せがましいかな。でも、今度だって君を救って見せる」
俺にはあらゆる物語の主人公の様にチートと呼ぶべき力を持つわけでは無かった。
それでもあれだけの事が出来たんだ。
今の俺ならば『無血』を乗り越え、この世界の人達と向こうの世界の家族や友人たち、その双方を安心させる事ぐらい、出来ない訳がない。
「……
出来れば戦いたくはないが……。
「利用や害は全てが意図して行わる物ではありません。僕は、貴方様が辛い目に合うのを見たくありません。……お許しを」
幾千、幾万もの触手がこちらに襲い掛かって来る。
俺はそれを取り囲むように無数のウィンドウを展開する。
それに書かれる内容は全てが世界の真理。
全てが理解してしまえば気の狂う宇宙の法則。
そもそも俺のステータスウィンドウ自体が、この世界の全てを記された書物、アカシアコードだ。
神の自覚のない段階の俺では自分の情報しか取り出せなかったが、今ならいくらでも引き出せる。
……そして、それは延びて触手をばらばらに切断する。
この世界その物が俺なのならば、俺が触れなければ動かないウィンドウも動かすことが出来る。
ばらばらになった触手の切れ端、その一つ一つがまた動き出す。
「
俺の背後のウィンドウから黒い、燃え盛る触手を伸ばし、それらすべてを焼き尽くす。
しかしその程度で彼女の武器は尽きないらしい。
『無血』の右袖から五十六億七千六百二十八万千九百三十五本の細い触手が現れ、それが一本にまとまる。
そして俺の方へと光速で伸びる。
「
時を止めた。
光の速度まで達した物体はそれを無効化するともいうが、しかし止まった。
「クルル」
窓を開け、巨大な鍵爪で『無血』を原子レベル以上に切り刻む。
「
二兆三千五百六千二億九千百四十八万七千三百二十三度の炎をもってして、触手もろとも彼女を焼き尽くす。
時が再び刻み始める。
「……ヒトの姿の僕では勝てない様ですね」
次の瞬間には『無血』は再生していた。
首の吸血痕が消える。
そして彼女は人の姿を捨てた。
触腕、鍵爪、腕や足、それらすべてが伸びて縮む不定形の肉の塊、黒い翼が生え、黒い火を噴く目、闇。
可視光線によって見える姿はそんな感じだが、その存在は俺の知覚する次元や時間にまで浸食してくる。
それは手で空を、そこに内包する俺を握った。
実際にそれが手を持っているかは定かではないが、そう表現するのが一番近い。
俺の心臓と脳が爆ぜた。
------------------------------------------------------------------------------------------------
ー次回予告ー
次回「アザトースの夢」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます