答えのない世界
一色 サラ
・・・・
深く沈んでいく闇に、死に手が伸びる。
”死にたい”
そこには、明確な答えなどない。なにも考えたくなし、何も感じたくはない。楽しいなど思いつかないし、考えたくもない。
素敵な世界など、幻想の闇に、沈んでいく。
「どうかされましたか?佐藤さん?」
「いいえ、何でもありません。」
私が死んでも、この会社にとっては何も迷惑なことはないはずだ。あったとしら、過労死かもしれないが、定時に始まり定時に終わる職場なので、考えにくいだろう。
「佐藤さん、ここって合ってますか?」
「はい、合ってますよ」
あの女はいつも、私に確認しに来る。間違っていれば、きっと私に確認してもらったと課長に言って、責任を押し付けてくるのだろう。
頭痛が止まらない。自分の仕事もまともに出来ない人ばかりの職場。責任をなすりつけ付け合い。なんで、ここにいるのだろう。
「佐藤さん、悩みがあるなら聞きますよ」
「ありがとうございます」
あなたにそうだんするつもりなど、一ミリもありません。とも言えない。
常に、考えることが、いつ死ぬかだ。誰かに相談したらと言っても、死ね方法しか思いつかない。痛くなくて、苦しくなくて、遺体が消えてくれたら、それでいい。
誰にも迷惑のかからない死に方がないのだろうか。
SNSには、多くの言葉があるが、すべてが綺麗事に見えてくる。『1人じゃない』『生きていれば、楽しいことがある』何を読んでも、胡散臭い。すべて他人事でしかない。誰も人の人生を保証してくれるわけではない。望みどおりに他人が動いてくれるわけでもない。
それでも、誰かの言葉や行動に何かを期待してしまう。何度、裏切られようとも、信じていた時もあった。『助ける』という綺麗事に、心が蝕まれていって、絶望のみが残っていく。さらに、死が加速し始める。
また、朝が来てしまった。窓の外は、空が青く透き通っているが、何も感じることはない。生きるための限界をどこかで感じ始めている。無意味さと絶望の狭間で、何かが揺らめいている。
※
君は弱音を吐けない人だ。弱い部分を出すことを恥だと思っているとしたら、残される者としては、本当に辛いよ。
悩みを分かち合いたかった。もっといっぱい時間を共有したかった。なんで何もできないのだろう。もどかしさだけが漂っている。綺麗事でもいい。今の世の中、弱音ばかりで自分に甘い人間ばかりなのに、なんで君が死んじゃうの。辛さを分かち合いたかった。生きることが辛かった。
※
椅子にロープを絡ませ、自分の首に巻き付ける。
「さようなら」
答えのない世界 一色 サラ @Saku89make
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