第6話 ジュティの決意②

ジュティが何を言っているのか、さっぱり分からなかったカルロ。

ゆっくりジュティの言葉を繰り返して、どういう意味なのかを本人に問う。ジュティは年齢の割に幼い喋り方で、それでも丁寧に説明してくれた。

「つまり、マルコスさんは精霊様達の元を旅している人で、自然の調査をしている人ではなかったって事かな。この村にも精霊を探しに来たって事なのかな。」

ジュティは頷く。

暖炉から火花が散る音が聞こえてくる。

「だけど何かがあって、マルコスさんはそれが続けられなくなった、そしてその役目を君に、ジュティにお願いしたって事?」

ジュティは再び頷いた。

「・・・」

カルロは沈黙した。

マルコスさんは変わった人だった。彼がこの村に来たのは、カルロがまだこの村にいた、冬の寒い時期だった。

自然調査を請け負って来たという彼は、その人辺りの良さですぐ村のみんなに受け入れられた。

祭りがあれば参加したし、みんなと同じ召し物を来て、伝統の踊りを踊っていた。


考えていたら、ジュティの周りに淡い光がいくつも見えた。

「え??」

その光を凝視する。何だ?一体いつ現れた?ジュティ自身、その光の玉に気づいたのは同時くらいであった。

「ヒゲのおじちゃんの!」

そう言うとジュティは椅子を飛び降りて玄関へ向かって走り出した。


この淡い光は、ヒゲのおじちゃんが獣避けに使っていた光だ。

ヒゲのおじちゃんがそばに居る。そう思って家の玄関を強く押し勢いよく飛びだした。


「ヒゲのおじちゃん!」

闇夜の圧力に負けないように叫んだ。だけど反応はない。

「ヒゲの!おじちゃん!」もう一度叫ぶも、ただ闇夜にのまれるだけだった。

10個ほどの淡い光が少女の周りに漂い続けていた。


家の中から、カルロも出てくる。

寒さに体が震える。そして闇に支配された村の中は、とても怖かった。

「ジュティ、その光は?」

「これはヒゲのおじちゃんが獣避けに使っていた光よ」

前方に広がる闇夜の中にヒゲのおじちゃんがまぎれていそうで、どこもかしこも闇で全く見えないのに、その姿をどうしても探してしまう。


獣避けの光、そうジュティは軽く言ったが、そんな光をこんなに沢山呼びだす事が出来るなんて、尋常じゃない。

獣避けの光は、魔法だ。


「マルコスさんが居るって事?」

闇夜を眺める。姿はない。あったとしても見えない。

松明を持ってこようと、移動しようとした時、闇の中で何かが光ったのが見えた。

それが何か、本能的に理解した。獣だ、獣がいる。

「ジュティ、逃げるんだ!!」

なぜ獣がジュティを狙っていると思ったのか、自分でもわからない。


カルロの声と同時に、ジュティは走り出した。

獣が居ない方向の闇夜へ。村に明りはあるが、その明りの方へは向かわなかった。

淡い光が数個、ジュティを先導していたのだ。考える間もなく、ジュティはその光を追って走っていた。

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