第4話 ヒゲのおじちゃんからの手紙
-僕のかわいいワッフルジュティへ-
突然こんな事を聞かされて、ジュティはきっとびっくりすると思う。
ほんとは色々話しがあって、理由もあるんだけど、時間がないから簡単に言うね。
僕の代わりに、世界を旅してくれないかな?
急なお願いで、本当に申し訳なく思ってる。ごめんよ。
だけど、他にお願いできる人がいないんだ。
ジュティはきっと信じてくれると思うから言うけど、実は僕は神様の使いなんだ。
驚いたかな?
僕は世界中の精霊達を起こして回る役目を持っていて、だから旅をしていたんだけど、
ちょっと色々あって、急に旅をする事が出来なくなってしまってね。
ジュティがその精霊を起こす役目を変わりにしてくれると、とても嬉しい。
僕がまた旅をする事ができる様になるのは、かなり先になりそうなんだ。
精霊達を起こさないと、その土地が腐ってしまう。
精霊達がなぜ定期的に眠ってしまうのかは・・・また今度話そう。
ジュティにあげたこのノート、このノートに、精霊達の居場所を書いておいた。
急いで書いたから、読めない所も沢山あると思うんだけど、まわりの人達に助けてもらって、なんとか頑張って読んで欲しい。今後出会う精霊達も、きっと力を貸してくれる。
ジュティならきっと出来る。
どうか、僕の願いを聞いて欲しい。
大好きだよジュティ。
最初のページはそこで終っていた。
急いでページをめくる。だけど、そこにはもう、ジュティに投げかけられた文字は無かった。
変わりにあるのは、読めるけど意味がわからない言葉だけだった。
パシーの花が生い茂る
水場にあるのはアウロネの住処
春にはパシーの花びらが舞い
冬には氷が閉ざす世界
「???」
またページをめくる。似たような言葉達が並んでいる。
「精霊を起こす・・」
頭を整理しようと必死に考える。
ヒゲのおじちゃんは、遠くに行ってしまった?どこに行ってしまった?
こんな、お別れの手紙のようなものを残して、もうここにはいないと言う事?
急に?どうして急に?何があったの?
精霊の居場所?
ジュティはヒゲのおじさんが精霊の話しをしていた時の事を思い出した。
「精霊は、ずっと同じ場所に留まる事もあれば、移動する事もあるんだ」
この村人が祭っている精霊の話しをした時に、話していた。
「きっとこの地の精霊は、この土地の事が大好きなんだろうね」
年に一度の、精霊様を祭るお祭りの日の夜だった。
トレードマークの帽子を脱いで、服も、村人達と同じ祭り用の衣服を着ていた。
暗いからと、手を繋いで歩いてくれた。でこぼこ道は歩き慣れているものの、視界が悪い夜に歩くのはまた転倒の危険が伴う。特に、普段、夜出歩く事のないジュティにとっては、一歩一歩、歩いてもいい位だった。
「僕はよく精霊と会うんだけど・・彼らはほんとに隠れるのが上手だね。なぞなぞも好きだ。」
”精霊と良く会う”
精霊と会うなんて、まるで普通ではないのに、すごいなぁ、くらいにしかジュティは思って無かった。
明りが全くない箇所で、ジュティは転びそうになった。
その時ヒゲのおじちゃんが、繋いだ手ごと上にひっぱりあげてくれて、転ばずに済んだ。ヒゲのおじちゃんにありがとう、とお礼を言って、また転ばないように、今度は両手でヒゲのおじちゃんの左手を握りながら歩いた。きっとおじちゃんは歩きづらかっただろうけど、何か言ってくる事はなかった。
ノートを肩掛けバックに戻し、家を飛び出した。飛びだして、村中を走った。
ヒゲのおじちゃん、と沢山呼んだ。
大声で、牛舎の中や人様の家の中に向かっても、ヒゲのおじちゃん、と呼んだ。
だけどヒゲのおじちゃんは居なかったし、出て来てもくれなかった。
太陽が沈みかけた頃、とうとう息が切れて、走り回るのをやめた。
ヒゲのおじちゃんを思い出して、ジュティは声をあげて泣いた。
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