第20話 手でバレる
夏姐さんに店に連れ戻されて、仙台さん達の前に突きつけられた。
「ほんとぉごめんなさいねぇ。デートのところをうちの部下達が邪魔しちゃって……」
邪魔したっていうか、今してるっていうか。恥ずかしい……常田くんはわたしの手を握って口をムッてしてるし。
ああ、仙台さんの横のお嬢様みたいな彼女……品がある。やっぱり彼にはこういう人がお似合いなのよ。
「いやいやー、僕らの方がデート邪魔しちゃったみたいな……」
「そ、そんな……彼女さんと飲んでいる時に」
仙台さんはポカンとした顔をしている。彼女さんと顔を合わせてそのあと笑った。んん?
「彼女に見える?」
「えっ?」
「僕の姉です」
うそーっ!!! 仙台さんのお姉様ぁ?! 確かにスタイル良いのはすごく似てるけどぉおおお。常田くんも夏姐さんもびっくりしてる。
「ねぇ、春生。この人たちは誰なの? 仕事の関係の人?」
「すぐそこの図書館の司書さんたちだよ。今日お世話になって。本当に今日はありがとうございました。後日お礼にと思ったのですが……」
と丁寧に椅子から立ってお辞儀してくれる。やっぱり仙台さんっていい人!
常田くんはもじもじしてる。顔真っ赤にして。
「そんな、お礼だなんて……ねぇ。こちらは市の施設ですし、またなにかあったらなんなりと」
「そうだね、うん。宜しかったら……何か奢りますよ」
「いやー、そんなそんな!」
なんて気前のいい人! でも奢ってもらうとか……。
ドン!
「あー、だったらこのアヒージョとか、チーズポテトとかっ」
夏姐さんが後ろから割り入ってきてメニューを出してきた。まぁ、節操ない。
「あー、だったらアヒージョにしてそれに合うワインをマスターに出してもらいましょう」
「やったー! ふぅーっ」
こりゃ、夏姐さん飲むな……。常田くんはずっと横で立ち尽くしていた。
私たちのところにアヒージョとワインが運ばれてきた。私は手を洗うためお手洗いに行きたかったが、仙台さんいるし……男性用トイレ使うのが気が引ける。でも見た目今女だし。こういうときは夏姐さんと入るけど……なんかなぁ。
あ、でもトイレの前にも手洗い場があるからそこで手を洗おう。
「あら、そこで手を洗うの?」
仙台さんのお姉さん! って、思ってるうちに手を引かれて女子トイレに連れてかれてしまった。な、なんで?
「春生から聞いてるわ。図書館にいる綺麗な人、シノノメナギ」
うわ、フルネームで……。な、なにっ。
「うちの弟ね、ここ半年ふさぎ込んでたの。今年いろいろあったじゃない、んでー教師や仕事もうまくいかない、疲れも取れない……」
あ、だからなんか啓発本ばかり読んでいたの? まぁ確かに心配になるレベルだったけどさ。
「電話で相談受けてたけど、あ、私は普通のOLだけどさ。もう心配でね。そしたらある日を境に声色が変わって。恋をした! って」
恋……。
「あなたに恋をしたって。前からずっといる司書の人が気に入っててついに声をかけれた! って」
……片思いじゃなかったのね。なんで気づかなかったの? わたし。
「そしたらさっきの彼氏さん……よね?」
「は、はい……」
しまった、ついYESと言ってしまった。NOでもよかったのに。
「あらまーびっくりってなわけ。あなたたちが外に行った時に、やっぱ彼氏いるんじゃんって少しがっかりしてたわ。でもあなたのおかげで弟も元気出たみたいだし……本当にありがとう」
「い、いえ……わたしは何もしてないです」
わたしもたくさん妄想させてもらいました。こちらこそ感謝ですっ!
「こっちに連れ込んじゃったけどさ、あなた男でしょ」
!!! な、なんでっ。手を握られた。
「この手の形、男っぽい。首はタートルネックでか隠せる、化粧である程度の粗は隠せる。だけど手は正直なのよね」
……そ、それ気づかなかった。確かに喉仏わたしは大きいからなるべくタートルネックにしてたけど。
「まぁ弟には少し夢見させてあげたいから内緒ね。本当に可愛い。失礼だけど整形してる?」
「してません……」
したいなぁ、二重と顎のライン……。
「まぁ、お幸せに。間違っても弟には内緒よ」
「は、はい……」
ぐいぐいくるお姉さん。仙台さんと結婚していたらわたしこの人と家族になるの少し無理かも。なんとなく。でも悩みを聞いてくれる人が仙台さんにもいてよかった。
にしても仙台さんと両想いだった、というのが嬉しくて……。
っ! 先に戻ったら夏姐さん一人でアヒージョつつきながらワイン飲んでるし。
んで、なぜ常田くんが仙台さんとっ?!
「あらあら。あなたの彼氏さん……どうしちゃったのかしら」
「おかえり。なんかさ話をしてたら同じ歳ってわかって盛り上がってた」
あ、同じ歳?! 仙台さん、わたしより年下だったの? 包容力ありそうとか思ってたのに……てことはお姉さんは。
「私は36歳。梛さんは?」
「……35です」
「やだーっ、同い年! どこ中?」
なんかこの人、口を開くと性格違うんですけど。見た目はいいけど時間と共にボロが出るタイプね。
仙台さんがトイレに行ってる間にお姉さんが常田くんに聞いてきた。ボリューム小さめで。
「梛さんのどこが好きなの? ……男性ってしってるのよね」
ストレートに聞くのね……。
「好きなものは好きです。男性だろうが年上だろうが出生が違っても関係ない。地球で生まれたんですから、同じ」
地球って規模でかい。でも仙台さんのお姉さんはニコニコっと聞いてくれた。悪くはない人なんだろうな。姉弟揃って。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます