ウソと甘さ

「図書館で大きな声を出したらいけないよ。それとあまり余計なことをするものじゃない。」

私の大声で駆け付けたようなことを言っているが、きっと見ていたのだろう。会話の内容まで聞いていた。見透かしていたのではなく、本当に知っていたのである。

[識さんは白の女王を守りたかったんじゃないですか?だとしたら私の今の言葉はあなたにとっては不利には働かないはずでは?]

そのはずなんだ。今まで不思議に思っていた。使いの者が来た時も、ほかの人よりしっかりした身なりも、なにより、同じ甘い匂いがする。確実に識さんと白の女王は繋がっている。

隠していたことがばれたにもかかわらず、余裕な笑みを浮かべている。

「ルイス・キャロルの不思議の国のアリス。あれはとっても名作だ」

[関係ない話を…!?]

なんで、知っているのだ。その世界で、原作を知っているなんてことがあり得るのか。…あり得るのだ。なぜなら私の意識の中だから。

「この図書館にも置いてあるんだよ。何度も書き換えられているけどね。」

書き換え…?原作を知っているというわけではないということなのか?一気に形勢逆転され、困惑する私の後ろから

「あんまり虐めちゃぁダメじゃないか。識。」

聞き覚えのある声、独特な人を小ばかにしたような喋り方。道化さんだった。

「お前はまた邪魔をしにきたのか。残念だったね。今回のアリスも失敗だ。今回は…もうしばらくしたらわかることかな。」


「あーあ、だから私が邪魔してあげたのに。」

そこに立っていたのは、白の女王だった。

「姉は、自殺してしまいましたよ。」


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