第2-3話 診療所


2-3 診療所

少年はアルドたちの反応をよそに

目を閉じて何かに集中してるようだった。

暫くすると目の前に砂が集まり黒い風穴が

現れた。

少年は歩き出すと目の前で風穴が広がる。

別の世界に通じているようだった。

時空の歪みを潜った少年の横顔は無表情であったが、どこか寂しげだった。


フィーネは後を追う。

アルドは村長を背負い後をついていった。


アルドたちは石積みの階段を登り、ドーム状の簡素な診療所へと案内された。

「今は誰もいない。ベッドはどこでも使ってくれてよい。好きに休んでくれ。翌日、お前らが探してるトラウマに効く薬を渡すからすぐに出ていってくれ。」


アルドたちは半信半疑で寝床についた。


一方、その頃、魔獣の国では、転生前の魔獣王が人間との戦争に向けて着々と準備を進めていた。

ギルテナ「余の命に従い、わが祖国の地を不純な地で汚す忌まわしき人間どもに粛清を!」

配下の兵が大音声で王の意思に応える。

王が演壇上を後に城内に戻るとマントを投げ、キメラの骨でできたまがまがしい椅子にどしっと座った。

側近のアインが割って入る。

「ギルテナ様、大変でございます!」

「どうしたというのだ?」

「アルテナ様直属部隊の訓練生が行軍演習中、ユダ砂漠にて連絡が途絶えました」

「なに?」

「人間に襲われた模様です。付近を探索しましたが、何も見つかりません。また、やつの仕業かと・・・・・・」

「黙ってみておれんな。私が行こう。例の部隊を用意しておけ」

「はっ」


アイン「わしだ。アインだ。ユベルか?これから王が進軍をはじめる。」

アインは城内の隅で鏡に向かい何やら通信を始めている。


「そうだ。じきじきだ。機は熟した。やつの計画をいよいよ阻止するときがきた。ああ。時の女神等われらには邪魔なだけだ。

手筈通りに進めよう。切るぞ」


城内には透き通った声で笑う男の声が残響していた。

アインは、にやりと笑うと、大広間を抜けて、薬品の匂いの充満する実験室へ向かった。

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