7話 1次選考 結果
関東グループの予選から一週間後、全国の各会場で開催された一次の予選は予定通り終了した。そうして選考通過バンドの発表を高校帰り、行きつけのカフェで待つリカとなこ。
「あー、さすがに緊張するね」
なこは軽く笑いながらも、言葉どおり口元には緊張が隠しきれていない。
「ヤバイ、コーヒーの味がわかんない」
緊張が顔に滲んでいるのはリカも同様。昨晩からなかなか落ち着かない。今日の授業がほとんど頭に入っていないくらいに。
発表十七時の一分前。
落選だったら怖い。二ヶ月の努力が無駄になるんじゃないか。そんな不安を抱きながら、リカはなこの横でスマートフォンを見つめ、固唾を飲む。
「心の準備はいい? 一回深呼吸しとく?」
「いいよ、覚悟はできてる」
「よし、えいっ」
十七時を回った瞬間に、なこは発表ページを開いた。通過バンドは五〇六組の中から三十組。なこは下へページをスクロールしていく。
「まだ……ない? 見落としてないよね?」
「見落としてはないと……思うけど」
ページの半ば、そして下部をスクロールしても【
「あった!!」
「うそ、ほんと!?」
なこが細い人差し指を伸ばした先には、確かに【
「五十音順だったんだ……。不安にさせないでよ、もう」
「あは、心臓に悪いね。けど、第一関門突破だ」
「そうだね。ああ、よかった」
なこが差し出した掌を、リカは心底緩めた顔で握り返す。
「グランプリを狙うバンドからしたら通過点なんだろうけど、リズにとっては大きな一歩だね。あたしたちのスタイルでも通用することがわかったってことは」
「だね。次の選考まで二週間しかないけど仕上げていこうよ」
「リカちゃん、声が裏返ってたもんね。ちゃんと直してよ?」
「う、反省してる……。どうしても緊張が抜けなくて……」
「ま、あたしだってミスはあったし。お互い反省して、最高の状態で次も突破しちゃいましょう。よ~し、今日は祝勝会だ。ケーキ食べちゃおーっと。何にしよっかな~」
「じゃあ私はモンブランで」
この時ばかりはご褒美として、二人はちょっとばかしの贅沢をした。
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