7 結局は聖なる光に焼かれても

 「……ご、ごめんなさい!!……って、親切に自分のこと話してくれてた。」

 「!」 

 怯えて少女は、頭を抱えて蹲るも。

 僕が怒りのあまりに滑らせた言葉に、ピンと来てしまい。

 こっちもつい言ってしまったと、口を押さえそうになる。

 「……なるほどなるほど。それが、あなたの悩みね。」

 気付いたか、少女は一転して。

 蹲った姿勢を解き、感心して頭を軽く上下する。

 「……。」

 僕もまた、相手は赤の他人だ、無闇に怒りをぶつけるべきでないと思い。

 一旦自分の怒りの牙を収める。

 「……こほん。」

 僕が話を聞く様子を見せたと知るや、整えの咳払い。

 「ま、まあ。その。色々とごめんなさい。お、お詫びじゃないけど、私が、できる範囲でなら、何かしてあげるわ。」

 からの、お詫びとして何かしてくれる、とのことだ。

 聞いて僕は、眉をピクリと跳ねさせて。

 「じゃあ、世界滅ぼして。」

 抱く願いを言った、それも躊躇いなく。

 今僕の心に堆積している鬱屈、怨讐。

 それが叶えられるのが、今僕の願いであり、それ以外は、いらない。

 今は、それが望みで、それ以外は、望んでいない。

 「?!は、はぁ?!え……っ?!」

 耳にした少女は、目を白黒させていて、変な声を上げてしまう。

 予想外の言葉だからだろう。

 まあ、こんな破壊思想持つ奴なんて。

 きっとその少女からしたら、初めてのことで。 

 おめでたいね、こんな人間、君にとっては初めてだろうね。

 けれど、これが事実、だからと僕は、今更願いを変えない。

 「ちょ、ちょっと……考え直しなさいよ。」

 「……。」

 不安そうに諭してくるものの、僕は無視する。

 「ほ、ほら。あなただって、大切な人……ええと、お母さんやお父さんがいるでしょ?他にも、好きな人とか……。そ、そんな願いが叶っちゃったら、ど、どうなるかなぁ?」

 今度は情にも訴えてくる。僕は、それら一蹴して。

 「そうだな、大切だな。あと、僕に好きな人はいない。だがね、それがどうした?この怨讐、どうやって発散する?あのな、今の僕はね、そんなことじゃ、もう止められないんだ。」

 理由言った、言ったならまた。

 抑え込んでいた自分の感情が、また口元に溢れてきて。

 「っ!そう!!止められないんだ!!!どうやってもな!!」

 歯軋り一つ、また吐き出すように言ってしまう。

 それが皮切りに、言葉止まらなくなる。

 「端から見たなら、やめた方がいいさ。だがな、僕は、それで抑えられると思うのか?!いいや、違うね!いつもそうだったさ、そうやって抑え込んで、その結果がこれで。変わりやしない。なら、怨讐の願いを言っても、構わないよな、どうだ?!どうなんだ?!」

 ああまた、口汚く。

 そう、もうどうしようもない。

 言われた少女、また引き気味に僕を見て。

 また、解決策用意するために、少し逡巡してもいる。

 「……ええと、ごめんなさい。実は、私あんまり人のお願いを叶えるの得意じゃなくて……。ちょっとした、おまじないぐらいしか。あははっ、ごめんなさい。まだ修行中で……。」 

 導き出したことには、逃げの言葉。恥ずかしさ、笑顔で誤魔化して。

 「あっそ。まあ、期待してもないし。」 

 その様子に僕は呆れたものの、期待していない。

 もう話は終わったと思い、帰り道を行こうと踵返す。

 「!!ま、待って!!」

 「……。」

 また、止められる。まだ何かあるの?

 僕は、怪訝そうに、また、苛立ち交じりに振り返って。

 「わ、私じゃできないから、か、神様の世界に連れて行ってあげる!そ、そうしたらあなたの心の中も、その怨讐も、拭えるかもしれない!!だから、その、行かないでよ!折角だから……。」

 「……。」

 自分じゃできないけれど、他のもっとすごい存在ならどうにかできると。

 少女は引き止めに言葉掛けて。

 聞いて僕は、いよいよ宗教の勧誘かと完全に思い、急ぎそうになるものの。

 だがこの琥珀色の世界だ、人技じゃないのは分かり、間空け、思考。

 ふっと、呆れた溜息一つ漏らし、まだ聞くつもりで少女を見た。

 聞いてくれたと少女は、安心し、胸を撫で下ろす。 

 「……ええと、願いを叶えてくれるか分からないけれど、もっと的確に、助言してくれるかもしれないし。それじゃ、神様の世界への門、開くわね。」 

 言ったからには、ちゃんと実行しないとと。

 少女は言って、祈るように両手を合わせる。

 「……。」 

 こちらもこちらで、聞くならと僕はきちんと向き直って、その様子を見る。

 「!」 

 少女の体が、発光した。

 また、あの時、出雲大社で聞いた、鈴の清らかな音色も響いてきて。 

 何か始まるそれに、僕はふと、心が微かに高揚するのを感じ取る。 

 合わせるように、今度は少女と僕に、光が差し込んできた。

 清らかな、光、聖なる光と言うやつか。

 「?!あ、あら……?!」

 「?」

 その聖光射す中、少女は何か引っかかるような言葉を呟いてくる。

 何事かと僕は首を傾げて。

 「……あ、しまった……。」

 「?」

 続く呟きは、……不安を呼び。

 そして不安は、現実化する。

 「?!」

 聖光が一変、浄化の激しい光と形容しようか。

 激しい衝撃を伴って僕らに打ち付けてきた。

 「?!がぁあああああ?!」

 僕は、まるで罰されるように壁に叩きつけられる。

 ただでさえ、体が痛むのに、さらに加えてか。

 散々だ。また僕は、ここでも痛めつけられるのか?!

 「……ご、ごめんなさい!!し、失敗しちゃって……ああ?!」

 弁明に少女は言ってきて。大慌てだ。

 しかし、だからといって、力が止まるわけがなく。僕を激しく痛めつけて。

 「……あんた……な……っ!!っ!!」

 世界に、あの男に散々痛めつけられていて、怨讐もいいところ。

 そこまできている僕に、更なる痛めつけをやるならば、もう簡単に噴出し。

 怒りに僕はまた、突き動かされて。

 壁に打ち付けられたにも関わらず、立ち上がり、睨み付けた。

 それが、攻撃とみなされたか、守るように今度は、建物が動き。

 壁がせり出し、かつ、僕には攻撃をするように。

 その様子に、僕は余計腹を立ててしまう。

 こちらは、守るものが一切ない。今

 この時までも。鬱屈からも、怨讐からも、誰も何も守ってくれない。

 憎らしい。僕は、歯軋り一つ。

 また獣が牙を剥き出すように、僕は歯を剥き出しにして。

 拳を握り締め、血が滲みそうになるほど。

 「いい加減にしろぉおおおおおおおおおおお!!!」

 一気に咆哮し、怒り力にして、僕は殴りかかった。

 普通、壁何て殴ったら、痛いだろう。

 頭に血が上った僕は、そんなことお構いなしだ、殴りつける。

 きっと、固い壁に阻まれて、どうせまた、ケガをするだけなのに。

 「?!」

 だのに今、それがなぜかない。怒りの勢いのまま、殴りつけた、守りの壁が。

 僕の拳に触れたそれだけで、霧散して。

 その光景、信じられなくて。僕は目を丸くしてしまう。

 「ひ?!……あっ?!」

 少女もまた、目を丸くして僕を見て。

 ……だが、また何かやらかしたか、嫌な悲鳴を上げる。 

 「?!ぐぁああああああああ!!!!」

 少女から光が発され、それは代わりに壁となって、僕を弾き飛ばしてしまう。

 叫びあげながら僕は、飛ばされ、加えて、空からの聖光に、……焼かれてしまう。

 ……その瞬間意識が飛んだ……。

 

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