第22話 刮目してみよ

「お話させていただくことはたくさんあるのですが、教育内容については興味をお持ちになったところから順にみていただければと思います。あと街中の案内は明日以降にさせていただきます。ここからは私のほうから質問させていただきたいのですが、よろしいですか?」


人体の血流から電力を得るってどんな魔法だろうと思考が飛んでたが、俺の質問タイムは一旦終わりのようだ。


「ん、そうですね。どんな内容になりますかね。」


「こちらの教育内容の説明をさせていただきましたが、ニホンではどういった仕組みがあったのか知りたいですね。」


「えーと、そうですね、日本では6歳になる年から6年間は、小学校で、その後の3年間は中学校で受ける教育が義務教育ですね。それが終わると大半の人は高等学校に行きますし、半分くらいはさらに大学に行ってましたね。あ、高校は3年間、大学は四年制が多いです。自分は四年制の大学に通ったあとは就職して仕事してました。」


「なるほど、年齢で区切られていたのですね。それぞれどういった内容だったかお聞きしてもいいですか?」


「ああ、こちらは、何を修めたかが重要そうですよね。ちなみに、この国は他の国と何か争うようなことはあるのでしょうか。」


「国家間での争いですか?昔はあったようですが、500年前ぐらいに転換期がありまして、それ以来の争いは競い合いとしてしか残ってないですね。」


ほー、平和なのね。それは一安心。ま、平和じゃなかったら金配って生存権の保障なんて余裕は生まれないよな。


「戦争がないならそれは良いことですね。年齢で区切って学校に集めるのは、軍の教育の名残みたいな風に言われることがあったので、こっちにはあるのかなと思いました。」


「学校はありますね。半分は仮想現実を通してですが、実際に集まることもあります。一人で学習を進められる人もいますし、そうでない人もいますが、生活を営むには人との関わりを体験しておくことは重要ですから。体験した上で、合うか合わないか、何をして過ごしていくかをそれぞれが考えていくことができるように教育内容はありますね。」


「であれば、そのあたりの目的は同じでしょうね。集団で同じ行動ができるようにとか、何か物事を進めるのに複数人で協力できるようにとか、あるいは他の人との違いを認識して自己を確立していくとか、年齢で区切られた集団でなければできないことや得られないものもありますからね。ん?成人年齢は15と言ってましたか。そこまでは学校があるのですか?」


「はい。学校に集める期間は8歳になってから15歳になる前までですね。それ以降は、やりたいことが同じもの同士で集団を形成したり、個人で好きにやったりそれぞれですね。」


「たしかに15も過ぎると性格も能力が伸びる分野も方向性が決まってますね。まぁ人間どこで化けるかわからないと、師事した人は言ってましたが。」


「化けるですか」


「良い意味で言えば急激に成長するってことですね。」


"男子三日会わざれば刮目してみよ"って呂蒙の言葉だったっけ。はて、女性に対してこの言葉用いるのはあんまり適切じゃないかな。まあ、日本語にしたときは男社会の時代だしな。男子を削っても伝わるのかな。なんというか、変化を見落とすなよって意味合いが強くなる気がするな。


「良い意味ですか。悪い意味では?」


「んー、化け物になるって表現のが似合ってしまう変化ですかね。」


うん、女性の化粧とか、髪切ったを思い浮かべてしまったのはなぜだろう。


「ああ、そういう変化はありますね。普段気にかけてなければ、急激に変わったように周りからは見えるでしょうし。法を犯す人の一部はたしかに化け物になってしまうことがあります。」


ん?その化け物、比喩だよな。モンスターになるって意味じゃないよな。ここは魔法のある世界。モンスターっているの?


「ええと、つかぬことを聞きますが、この世界には人の脅威になるような魔物とか化け物がいたりするのですか?」


「少なくともこの街ではそういった脅威にさらされたことはないですね。人が化け物になってしまったときのがよほど脅威です。あ、我々は他者の生存権を脅かすのを厭わなくなってしまった人を化け物と表現しています。魔物というのは魔法を使う動物という意味ですが、まあ、そういったものを観察したり捕獲して生体調査したりするのがセルジやラディの仕事ですね。」


魔法使いが魔法を使う動物を観察か。思いがけず彼ら狩人の仕事内容を知ったな。でも生体調査って、別にとって食うとかじゃなかったのか。獲物とか言ってた気がするが。武器の得物の話ではなかったしな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る