第20話 5人目

「ごちそうさまでした」


食糧生産系はどういう仕事があるんだろうか。かなり自動化された仕組みがないと、ベーシックインカム成り立たない気がするんだよな。余剰の生産力とかいざというときの備蓄とか、そっちの心配が少ないからたぶん他の問題が大きくなったんだろう。ってのは昨日も思ったが、しかし、その中で仕事があるとしたら、自動化が難しい食材の栽培とか養殖とか飼育とかの仕事してる人とかか。うん、それなりの土地のつてがあって、知識と経験がないとつけなそうな職業だ。まあ、その従業員としてなら何かしら仕事はあるかもしれないが、たぶん朝は早いだろうなぁ。ああ土地はあるのか。あの草原が開発していい場所ならだけどな。


物流系なら仕事は沢山あるかな。アスファルトで整備されてたから、車はあるのかね。どちらにしても肉体労働系のイメージがあるのだが。


加工系の一部特化した人たちは下手な機械よりも優れた技能を発揮してるのはテレビでよくやってたけど、そういう仕事があるとして、初心者でも入れる状況かなぁ。まあ、誰しも最初は素人なんだろうけどな。入った直後にそんな技能発揮できてたら何してきた人なのかってなりそうだ。


ゴミ収集系は、ないかな。ゴミが部屋から直接捨てられるようになってるし。いや、この建物の収集場所までかもしれないが。地下道でゴミ収集してる仕組みのある街の紹介をテレビでやってたからなぁ。それが実現できてても驚いちゃいけない街な気がする。


清掃関係はあるだろうが、仕事ととしてやるのか。なんか大変な気がするな。いやここは魔法のある世界か。そういうのがあるならあっさりできるのかな。その前に状態保存がきくような魔法が普及してたら清掃って何するのかって話にもなるが。魔法を前提にしたら俺、仕事できないがな。


少なくとも当面はしゃべることが片言でも済む仕事を探さないといけない気がしてるのだが。いや、あせっても仕方ないのか。まずはこの街の仕組みをもっと知ってから判断できるようにしなきゃだな。


食器を水につけた後、そのまま物思いにふけっていたが、この後人が来るのに出しっぱなしはないかと洗うことにする。歯も磨いておくか。


さて、来るまでもう少しあるな。続きを一応聞いておきますかね。何言ってるかはわからないが、音声として慣れておくだけでも少しは役に立つだろう。

ひとまず言語の続きを再生っと。


ピンポーン


呼び出し音が、聞き慣れた音なんだよな。わかりやすくていいが。来たようだ。

音声を止めて、点滅している箇所を押すと、外の様子が写った。3人?セルジさんと、ラルタさんと、あと誰だ?


「おはようございます。マモルさん聞こえますか、セルジです。約束の時間になったので伺いました。開けてもらってよいですか」


外に音声を出すのはこのボタンだな。押して返事する。


「おはようございます。少々お待ちください。」


玄関に向かっていき、そこに置いてあるカードキーは腕に装着してから扉にかざす。あ、この玄関引くんだっけ。中に引くのって、こっちの標準なのか?日本だと玄関は外側に開くことのが多い気がするのだが。


「おはようございます。ではさっそく、翻訳魔法をかけますね。」

「あ、はい。」


少しの時間で終わったようだ。視線を交わしてラルタさんのほうがしゃべる。


「マモルさんおはようございます。本日は私、ラルタとこちらのゼーラで教育の話に関しての説明と、ニホンのお話を伺わせていただければと思います。」

「ゼーラです。よろしくお願いします。」


ゼーラさんと言うらしい。ラルタさんらより若そうな女性がお辞儀をしている。


「よろしくお願いします。」

「では、私は今日はこれで失礼します。施設とか教育内容とかわからないところがあればラルタに聞いてください。」

「はい、ありがとうございます。」


そういってセルジさんは背を向けて歩いて行った。


「中でですよね。ではどうぞ。」

「「失礼します。」」


扉を押さえて入ってもらう。

あれ、椅子、3人分あるのかな。

ひとまず、ダイニングまで進むと、ラルタさんが言う。


「寝室の収納に椅子があるのですが、とってきて良いですか。」


あれ、見落としてたかな。収納は開けたんだけどな。


「そうなんですね。お願いします。」


するとラルタさんは視線をゼーラさんに向けて、ゼーラさんが動く。

上下関係ではやはりラルタさんのほうが上のようだ。


「じゃ、マモルさんはそちらの奥の椅子に座ってください。」

「はい」


促されるまま、とりあえず座る。


「今日はお昼までお話させていただければと思います。ちなみに昼食はどうされますか?」

「あ、ここの施設の食事をいただくにはどこかに移動するのでしょうか。それであれば案内いただきたいのですが。」

「ご希望であれば、こちらに運ばせることもできますが、ここは食堂もありますので、そちらで一緒に昼食としましょうか。その分話を聞く時間がとれますからね。」

「はい、わかりました。」


巣ごもり生活だったからなぁ。女性と一緒に食事なんていつぶりだろう。と、そこはかとなく物悲しい気持ちになるが、そういう話じゃない。

ゼーラさんが椅子を持って戻ってきた。折り畳みの椅子だね。


「ゼーラ、今日は食堂でマモルさんとご一緒することになりましたので、よろしくね。」

「はい、わかりました。」


なんとなく、初々しさがあると感じるのはただの年齢差か。それとも新人なのか。

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