第19話 食べながら思うこと
「知らない天井」
とは言えないか。昨日見た天井だ。
長い夢ではなかったか。それともまだ夢の中なのか。夢なんて覚えてることがまれな人間だからな俺は。覚えてたとしたら大抵怖い夢だ。自転車で山の下り坂を壮大に走り抜け、崖につっこんで起きるという夢だけいまだに忘れないのだが。ふう。頭の大部分は受け入れてるくせに、心の中ではまだ受け入れられないんだろう。ここが日本でも地球でもないということに。家族には一年近く会ってないから、別れの挨拶がとかいう感傷もあまりないが。同じ時間の流れかすら怪しいからな。
何時だろうか。寝ようと思えばけっこうな時間寝てしまう人間だからな。起きるか。
7時半か。飯が炊けるのは8時にしたから、顔洗っておくか。
布団を出ても特に寒くはない。洗面所に向かい、うがいをし、顔を洗う。顔、違和感だな。
まあ、顔の作りは前よりもましになった.から儲けものと思っておくか。
美人が3日で慣れるというなら自分の顔もそれより前には慣れるだろう。
本当の意味の慣れって、容姿の問題じゃなくて距離感の問題だと思うが。遠くから眺めるだけなら3日もかからんが、すぐ目の前だったら3日あっても慣れないかもな。自分のことは鏡を通さないといけないから距離0なのか、鏡との距離なのか。
どうでもいいか。
さて、サーテ語というのを見てみますか。
メニュー、アルファベットだな。
ローマ字読みではないし、英語読みとも違う気がするし、発音がわからん。
右上が音声案内だった気がするが、しまったな。先のメニュー知らないからどこまで操作するのかわからない。とりあえず押してみよう。
おお、なんかしゃべっとる。これはまずいな。覚えるのに苦労しそうな予感。
音声案内の先にメニューはあったが、音量調整だな。
戻って教育メニューに行くか。
えーと、言語は3つ目だったっけ。
んで、これが初心者教育の文字?と音声か。
まあ、少しずつ覚えていくしかないな。今日は翻訳魔法はかけてもらえるからそれまでは文字と音をあわせて見ていくか。読み上げ箇所の色変えてくれるから追いやすいし。
昨日みた説明を音声を聞きながら文字を追う。
うむ。うろ覚えだ。よって意味が怪しい。く、姿はいくらか若返ったというのに、どこぞの転生者みたく記憶力はよくなってないのか。
日本にいたころは起き抜けに勉強したなんて遠い過去だから単純にまだ頭が寝ているのか。寝不足じゃなきゃ頭働き始める時間は経ってるはずなのだが。
さて、単語押したらどうなる。あ、やっぱり音声の説明こっちに切り替わるのね。
文字列3つを矢印で結んだ図が表示される。
文字の流れか?それとも単語の中身が重要か。
たぶん文脈かな。もっとイメージがわかりやすい単語群から学習したほうがわかりやすいかな。
ポップアップを閉じてまたしばらく音声を聞いていく。文量の比較したら、こっちのが長いよな。漢字のほうが文字の幅は短いから。表音文字と表意文字じゃ、レイアウトって同じにしにくいんだよね。システムで国際化対応ってあるけど、あれ、うまくできてるところどれだけあんのかな。文章は翻訳サイトが大分頑張ってたけど、システムとなるとな。単語の長さで苦労させられた。ま、それは単一言語での話だが。
何やら音楽が流れる。この感じ、炊飯器のお知らせ音か?ふと見ると8時になるところだった。
お客さんが来る前に腹ごしらえとしますか。って、一泊程度じゃというか、この施設的には俺がお客さんか。
さて、何で食おうか。鯖缶もありだが。まあいいか、とりあえず味噌だけで食ってしまおう。
味噌握りにするくらいの量を箸で掬ってどんぶりに入れた玄米の上にのせる。
テーブルのほうに移動してさっそく食べるか。経口補水液はコップに入れておこう。
手を合わせて
「いただきます」
一人でいるときに声に出して言うのは久々な気がする。
用意されたものだからかな。この環境に感謝しないといけない気がした。
玄米だけで一口食べる。うん、問題ない。匂いが気になるか、食感が気になるかって思ったが、程よい歯ごたえで香りも糠臭さみたいなものはないな。
味噌つけて、また一口食べる。うん、味噌だ。うまみと塩気、なかなかの味。これ出汁入りか?
この味と食感なら一食は問題なく食えるな。他におかずもいらない。
ぱくぱく。
三食分炊いちゃったけど、昼飯どうなるんだろう。ラルタさんらと昼休憩は別か?いや、一回くらいは施設の食事処を案内してもらったほうがいいか。身分証の国民口座ってやつも実際に使ってみたほうがいいだろうし。あ、レンジがないんだよな。炊飯器の保温大丈夫かな。まあ、夕方までは持つだろう。それに夜に二合食ってもいいしな。
もぐもぐ。
しかし、どんな仕事がこの世界にあるのか。というか、どんな仕事ならできるのか。接客業はパスしたいし、肉体労働系はあんまりきついのは体力が心配だしな。頭脳労働系は、言語習得するか翻訳魔法を継続して使える状態にならないと無理だと思うし。うーん、単純労働系があるのかな。冒険者が探求者になってんだっけ。なんかなさそう。まあ、魔物退治とかもしあったとしても、できるとも思わないけどな。
んぐんぐ。
働かないという選択肢は、、、わからんな。その先の選択肢を著しく狭める可能性はあるからな。勤労の義務を書いてる箇所があるかわからないが、公共の福祉をそこそこ強調してる感じがするから働かないことが反してると言われる可能性もある。ってそしたら生存権ってなんだってなるか。まあ、たまに働こうとすることで逆に迷惑かける人も世の中にはいるからな。俺も日によってはそんなこともあったし。たいてい寝不足のときだが。あとは、やり方が複数あって判断に迷うときか。やり方が見えない時もか。まあ、それをどうにかするのが仕事なんだが、他の人より手が動いてない時間が長かった気がするんだよな。
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