第16話 俺って生きてる?

しかし、単語か。英語すらまともに扱えない身だけど、単語だけだと対応できないよな。熟語というか、基本的な言い回しというか、そっちのが重要って聞いた気もするが。まあ、程度問題か。単語がそれなりにわかってないと重要なとこもわからないし。一つがわからないだけで何を言ってるかわからないこともよくある。

単語に説明が出てくるのはいいけど、文脈とあってる説明が常に出てくるのか気になるところだ。絵があるからわかるけど、辞書引いたって余計にわけがわからなくなる単語もたまにあるし。いや、絵も言葉がないと何を指しているかわからない可能性はあるか。

まあ、8割くらいがそれでわかるなら十分か。残り2割のために思考が止まるのはよろしくない。はぁ、完璧主義のつもりはないんだが、システムなんて1文字間違ったら動かないか間違って動くかなんて仕事してたからな。まあ、かといって、2割くらいのロジックは実運用では通ってないんじゃないかとも思ってはいたが。いや、異常系のロジック考えたらシステムによっては逆か?

とりあえず、この世界の本当の文字が、今、目に映るものとどう違うのかさえわからないんじゃ、何割がわかりそうなのかもわからない。比較って重要だよな。仕事で一番使ったアプリはテキストエディタとdiffだろうし。表計算ソフトは別格として。他のは移り変わりが激しすぎてな。直接プログラム書いてる時間なんて、それこそ全体の2割くらい?


それにしてもアルファベートね。中国圏の少女が4000年前で、関羽像ができるくらいの影響力はあったのに、言葉というか文字の面では反映されなかったのかね。イタリア語ってアルファベットだっけ?フィレンツェから来たっていっても、いつの時代の人かで発音は現代とは違うかもしれないし、語彙とかもどうなんだろう。類推できるなら、、、いや類推で名詞って出てくるものなのか?うーん、謎魔法というか、魔法は謎だな。それこそアカシックレコードにでもアクセスできてるんじゃなかろうか。はは、俺含めて何人もが意識だけかもしれないがこの地に来てるんだからこの世界と地球は何かしらのつながりがあるんだろうね。

文法もな。欧州のどっかの言葉に近いとしたら、言葉の順番は違う気がするから、この見えてる翻訳どう作用してるのやら。パネル上の位置情報と単語は一致して押してるつもりだが、説明はちゃんとつながってる。アルファベットの文字で日本語の文法と同じとは思えないんだけどな。

英語だったら「必要がある、慣れるには、聞き取れるように、耳で、基本的な単語を、聞くために」とかの順か?

だけど、後ろにある必要を押してもちゃんと必要の説明だな。「どうしてもしなくてはならないこと」ね。聞くのは慣れろってね。例文と絵は「生きるためには栄養補給が必要」ですか。"必要"だけじゃ絵にはできないわな。例文ありとかだと、やはり言葉見ないと絵だけの判断は危ないな。この絵だけで理解しようとしたら、食べるって単語で覚えそう。

あと、これで生きるって何?とか見始めたら哲学になるな。ポップアップの説明にさらにポップアップはできなそうだ。生きるか。生存することなのか生活することなのか。

我思う故に我あり、か。俺、生きてるってことでいいのかね。

向こうで死んでたとしたら、遺体は残ってんのだろうか。残ってなかったら神隠しで行方不明だな。残ってたら、、、金曜だったな。向こうでは。正確には土曜の夜明け前に寝たのだが。秋深まる季節だったのにこっち春だし。いや、4月でも春とは限らないのか?じゃなくて、月曜まで誰にも発見されなくね?その月曜も会社無断欠勤になって、誰かが連絡取ろうとしない限り見つからんぞ。家に来るとしたら総務のあの人かな、立場的に。最寄り近いとか聞いた気がする。親兄弟とは滅多なことじゃ連絡とってなかったし。最近じゃ連絡といっても半年に一回の帰省のときか、葬式関係の話くらいか。ばあさんから、その姉妹、おじさんおばさんと、年単位で続けて亡くなってるからな。それに俺が入っちまうのか。親不孝者と言われるかね。親より早く死んでたら言われても仕方ないか。

ともあれ、会社関係の人だろう、最初に気付くの。アパートの鍵は大家さんに連絡行くのか?会ったことないけど。遺体があれば原因がはっきりするだろうけど、なかったら、逆に困りそうだな。どちらにせよ迷惑かけるのは同じか。


ふう。学習する気分じゃないな。今日はもう横になるか。いくら考えても何もできないんだけどな。

あ、PCの中身。うーん、誠一兄さん、何も見ずに消してくれないだろうか。ないか、資産の手掛かりとか見ようとするかな。ネット銀行とか証券会社とか、俺が何保持してるか何も伝えてないからな。通帳記載もせずにカード利用だけだし、相続の手続き大変だろうな。攻治兄さん、見てもいいから黙っててくれないかな。無理か。パスワードは本当に音だけで決めたもので知らないはずだから、総当たりとかしない限りは解けないだろうけど。ハードディスク抜いて直接見るくらいはするだろう。暗号化しとけばよかったか。会社のPCも置きっぱなしだな。まあ、そっちは会社の人が引き取るだろう。リモート操作用だから重要なの入ってるわけでもなし。

あー、この年で終活が必要だとは思わなかった。いろいろ散らかったままだ。

パートナーがいるわけじゃないからそこは気楽なもんだが、父さん母さん、兄さんら、ごめんよ。

寝て起きたら長ーい夢だったとか。。。ないか。こんなリアルな肌触りのある夢なんか見たことないし。おっと、なんだかんだでもう11時だったか。結局思考は停止してたな。余計な考えを巡らせて、それで目の前の目的に対しての思考が停止するのは体変わっても変わらずか。

テーブルのパネルを元に戻し、寝室のほうに向かう。

灯りを消すスイッチがないことに違和感を覚えつつ、まあこのくらいはすぐ慣れるだろうと楽観的に考える。

ベッドの中に入って横になる。寝室にはスイッチがあるので灯りを落とす。

なかなかの肌触り。弾力も程よい。

俺自身はこっちで生活するしかないんだろうね。はぁ。自分の力でどうしようもないことに思いを巡らしても何も変えられない。こういうときはスルーするしかないか。

体よ静まれ、心よ鎮まれ、とっとと寝よう。

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