第10話 そこは壁か宿泊施設か要塞か。

「昇降機はニホンにもありますよね。」


セルジさんが待ち時間で言ってくる。


「そうですね。これ動力はなんなの?」


「丈夫な縄で乗る箱を上げ下げしてます。それは電力によって動いていますね。」


なん、だと。魔力じゃない。ああ、少なくともこの施設はファンタジーじゃないのか。遠目に継ぎ目が見えないそれなりの高さの壁は十分ファンタジーではあったのだが。


「さ、乗りますか」

「あ、はい」


考えているうちに扉が開いた。7階までの表示だったが、それで全部なら、20メートルくらいの高さなのか?もう少しあった気もするが。関羽像は壁よりいくらか大きかったし、少なくとも鎌倉の大仏よりはでかいな。立ってるからって程度かもしれないが。んー、石造に見えたが材質はなんか特殊なものなのかな。


しかし、7が良く使われる国だな。月5週で週6日なら特別な数字は5か6になる気もするのだが。

まあ、7は孤独な数字と表現されることもあったし、ここでも特別、、、特別と思ってる人間が建築に関わった?どっかにFがあったら気を付けたほうが良いのか?できて7年なんて過ぎてると思うが。いや関羽像が古くてもこの施設まで古いとは限らないか。


「マモルさん?着きましたよ。出たとこで少しお待ちください。」

「あ、はい」


どうやら泊めてくれるのは3階らしい。エレベータが廊下の端のようだ。なんか液晶みたいのあるな。セルジさんがそこで少し操作してその下から何か受け取っていた。1階の入り口側が壁だから、別のエレベータがあって、局員向けの施設があるのかもな。そして、少なくとも廊下に窓はないな。


「お待たせしました。少し歩きます。」


初めのドアにはS1-3-01と書いてあった。まあ、部屋番号だな。後ろ二けたが順に増えていくとして、素直に考えると一棟目、三階の1番目の部屋ってとこか。Sは南のSだったりする?英語?セルジさんが知らない状態だったのに?とまた疑問符が浮かんでいたが、5部屋ごとに階段があり、セルジさんからは緊急時はこちらを使うことがあると言われるのを聞いたりしているうちに、足を止めた。8番目のところだった。まだまだ先があるけど、ぱっと見半分くらい?まさか15部屋か?


「こちらの部屋になります。部屋内の使い方の案内を聞くところまで説明しますので、部屋の中まで入りますね。こちらの券鍵が部屋の開け閉めに必要となります。身分証と同じサイズですが、トーチカ街の隣に、この建物を表す印、この部屋を表す印があります。なくさないようにしてください。腕に巻いておけるこちらの入れ物と一緒に貸し出しとなります。」


「あ、ありがとう」


差し出されたので受け取る。


「この券鍵を取っ手の上にある金属板にかざしてください。鍵が開きます。かざす前は取っ手は動かない状態になってます。ではどうぞ。」


セルジさんはガチャガチャと取っ手を動かそうとして見せた後離れたので、言われた通りカードキーをかざす。すると音が鳴る。


「鍵が開けば、その取っ手を下に押して扉を奥に押せば開きます。」


この辺は変わらないというか、ホテルとかの作りを真似たかね。取っ手が昭和の形じゃないから、やっぱり平成時代の人だろうなぁ、この世界の人が発明したのでなければ。腕につけるのも透明な素材使ってるし、他は皮かな。合成か天然かなんてわからないが、入り口はチャックだ。スキー場のリフト券入れるやつみたい。


扉を開くと少し色違いの床で仕切られていた。段差はないが履物変える感じか?


『ようこそいらっしゃいました。部屋内では履物を脱いでお寛ぎください。室内履きもありますのでご利用ください。』


おっと、自動音声もあるか。


『部屋内施設のご説明をお聞きしますか?こちらでお聞きする場合は画面に触れてください。部屋奥にもありますので、初めてのご利用の際はご確認をお願いします。』


セルジさんのほうを振り返る。


「あ、なんか大丈夫そうな反応ですね。その音声に従って画面を操作いただければ大抵のことは分かると思います。それは明日以降使う教育設備と同じです。設備説明加えているだけなので。ですので気になることがあれば先に確認いただいても良いですが、ほどほどにしてお休みになられたほうがよいでしょう。明日は朝9時、この画面でお知らせ音を設定させてもらいますが、その時間に訪問させていただきます。ちょっと失礼しますね。」


そう言うと、画面の左下にあった日時表記を操作して、スマホのアラーム設定のように画面が切り替わっていった。設定はすぐ終わったようだ。


「さて、設定は終わりました。先ほどの説明の基本操作は右下の領域枠を押せば音声案内が流れます。音声入力もできますが、今はなるべく画面操作したほうが良いでしょう。あ、ここの時間標記はわかりますよね。ほかに今、私に聞いておきたいことはありますか?」


「はい。えーと、もう砕けた話し方に戻してもらっていいよ?」


「ん?あ、そうですね。この国でも他人を敬う気持ちを持つよう教育されるので、丁寧な言葉に聞こえたのなら翻訳魔法が状況にあわせた訳し方に変えてるかもしれないです。マモルさんの意識次第なとこもあるので、魔法が効いてる間は意味が通じてればよしとしてほしいですね。」


「そういうものなんだ。あー、でも教わる立場と認識したらそんなに砕けた感じにならないかも。とりあえず、聞ける設備があるとわかったので、この画面で確認するよ。案内ありがとう。」


「はい、本日はお疲れ様でした。また明日お話を伺いますのでお願いします。あ、内側からあけるときも券鍵が必要になります。忘れて出ると入れなくなりますのでその防止用ですね。その辺りはお気をつけて。あ、標準の保管場所はここにありますのでご利用ください。ただ誰か部屋に入れるときはご自分でお持ちください。あと万一の場合は昇降機近くにあった受付でこの画面同様の案内がありますのでそこで確認してください。では。」


セルジさんはそう言って扉を閉めた。

はて、最初にかけられた魔法と実は違う魔法効果なんだろうか?最初は話し手が区別してたように思うが、今は俺の認識しだい?変わってたとしたらいつだろう。

はぁ、気付いてもそれの対応を変えようがないならスルーするのが身のためか。頭がいい人ならその違いが行動にも表れるのかもしれないが。俺の場合じゃ勘違いって線もあるしな。


立って画面操作もなんだし奥に行くか。きっと日本にあるホテルと大差ないだろう。まぁ、ホテルに泊まったの何年前だったっけって状態だけど。

カードキーは言われた場所において、スリッパは似たようなのだけど、念のため室内用に変えて奥に行く。


左側の手前の扉は、風呂と脱衣所か、次のはトイレか。ちゃんとわかれてる。反対側は収納だな。靴に、コート用?、本棚?、ホテルにこんな収納いるか?広がった部屋には椅子とテーブル。さらに扉か。けっこう奥行きあるな。寝るところは奥か。でも画面操作できるのはテーブルのところだな。

ん?左には調理場じゃんか。ガスコンロじゃなくてIHヒーターだし。冷蔵庫らしきものもある。なんというかホテルの一室じゃなくて一人暮らし用物件なのか?いや、椅子が2つあるから二人住んでも問題ないようになってるかも。


廊下側が外側だから、寝る部屋は街側か。やっぱり外敵とかいんのかね。20メートル級の壁で防ぐようなやつが。堀はないように見えたが。

監視体制は階が違うのか。どうもトーチカって名前のせいでそっちも気になっちまうな。壁の大きさはトーチカじゃなくて城塞のような気がするけど。ああ、そうか。ここよりも巨大な要塞があるものと思ったほうが良いのかね。

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