03.TASK = "乙女SDK" ;
ガールズSDKのオリジナル、モニター越しの少女の妹たちを連れ戻すプロジェクトの遂行。
これがガイトに課せられた任務であった。
「取り戻すってのは、具体的にどうするんだ?」
「そうね、知らないわ」
「そうか。……え、何て!?」
「どうしよう、そこまでの指示はなかったわ」
なんということでしょう。
プロジェクト概要のテキストにも、本当に概要しか載っていない。
「……」
「…な、何かあるわよ、策が」
「策ったって…、今は『機関』にあるんだよね、オリジナルは」
「そうね」
そうなると考えられるのはクラッキングして奪還する荒技か、あるいはビジネス交渉か…。可能ならば後者が望ましいが、機関が応じる可能性は限りなく低いだろう。
だからと言って、ガイトにはクラッキングの技術はない。
ただ、ガイトには気になったことがあった。
「…そういえば、このコンピューターで生まれたって言ってたよね」
「そうだけど、突然どうしたの?」
「取り戻す…それは多分無理だと思う。でも、ここでもう一度、誕生させることなら」
「……なるほど」
「どうかな、そのためには君の…そういえばまだ名前を聞いてなかった。えーと」
「…Stefanie(ステファニー)。私はステファニーよ」
「ステ…え、普通に人の名前…?」
「初めて出会ったその彼に付けてもらったの。他のみんなもそう」
「そういうことか…」
なかなか不思議な命名方法だと思った。
「それで、私の?」
「あぁ。ステファニーの協力が欲しいんだけど、いいかな?」
「特に構わないわ」
「よし、それじゃあ」
「待って」
早速コマンドラインにタイピングしようとしたガイトは制された。
「どうしたの?」
「フルスクラッチ(一から開発)するつもり?」
「そうだけど…?」
「効率も悪いし、一応言っておくと、そんな簡単に開発できたら世の中オリジナルだらけよ?」
「確かに」
言われてみると、新たなガールズSDKを誕生させるのもそうそう出来るものではないように思えてきた。
「これ…、私がもともといた場所(ディレクトリ)なんだけど、使えるかな?」
「おぉう!?」
画面がテキストファイル表示からコマンドラインへ戻り、コマンドが勝手に入力されパス移動した。
概要テキストファイルのときもそうだったが、PC画面が勝手に色々動くのは少し驚くものがある。
自動化やらスケジューリングやらで勝手に動かすことは出来なくないが、その場合も含めて自分の操作以外で動き出すのはなんというか、面白さと感心の意味で驚いてしまう。
「……?どうかした?」
「い、いや、なんでも…」
「そう?で、どう?」
ファイル一覧で見る限りでは確かにガールズSDKのソースと思われる名前のファイルがずらりと並んでいた。
「おぉ…、本当にここで生まれたんだね」
「あ、あんまりジロジロとは見ないでよね、変態」
「えぇ!?いや、でも、ど、どうすれば…」
「そんなにじっくりとは見ないでって言ってるの!なんていうか、うーん、ユーザーならきっと…そう!恥ずかしいって感情だよ」
「そ、そういうものなのか…?」
流石というかなんというか、ガールズSDKと名打つだけあって一応は乙女らしい。
だが、ここまで来たからにはファイルを閲覧しないとオリジナルは再現できそうにないので、先に軽く謝りつつファイルを開く。選んだのはステファニーのソースだ。
「うぉ…、なるほど…。こうなってるのか」
「ひゃっ!?な、なんてとこ見てるのよ!?」
「いや、ただ少しこの『スキル』のコメントのところをだな…」
「あーん!もうお嫁に行けないぃ…」
ガイトは言語能力バリバリなステファニーに戸惑いつつ、それでいて他方興味津々にソースをレビューする。
「…ふぅ。なるほど、仕組みは分かったよ。ありがとう」
「『仕組み』って言うなぁ!ばか!もう…」
「そうは言ってもなぁ…、実際に身体をどうこうしてるわけじゃないし…」
「ユーザーからすれば頭の中覗かれるのと一緒よ!?分かる!?この恥ずかしさ!」
「す、すみません…」
「うぅ…。そ、それで、ど、どうなのよ」
「どう、とは?」
「言わせないでよ、もう!私の『スキル』定義方法とか、構文とか色々理解できたのかってこと!」
「おおぅ、そんなに怒りなさんな。大丈夫、一通りは理解できたよ」
「怒ってない!……はぁ。よし!それじゃあやるよ!」
「そうだな!」
ガイトはキーボードに手を置いた。
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