第30.5話
「はぁ~~~~~~」
枕に顔を埋めて声にならない声を上げて行き場のない感情を少しずつ放出する。
「やっぱりこの作戦辛い……」
寝返りを打って天井を仰ぎながらつぶやく。
自分で立てた作戦はうまく進行しているはずなのに心はモヤモヤしていた。
見るからに引っ込み思案で大人しそうな
「まだ付き合ってないってなんなのよ! まだって!」
今はまだそのタイミングじゃないけど近いうちに付き合うみたいな言い草だ。
そうなるようにけしかたのは自分自身のはずなのに、いざ
「朗読が良かったのは認めるけどさ」
右腕で目を覆い、涙が溢れそうになるのを必死に堪える。
もしここで泣いてしまったら自分が失恋したと認めるみたいだから。
この作戦はあくまでも
「でも、誰がルナに投票してくれたんだろ」
一票は
たった6人の投票で部長が数え間違えるというのも考えにくい。
「少しだけ……誰かの心に届いたのかな」
スーッハーッと大きな深呼吸を3回繰り返す。
胸が大きく上下に動くのを自覚して、邪魔だけど武器になることを再確認した。
「にひひ。ゆうお兄ちゃん、ルナの胸にまとわりつかれてドキドキしてた」
妹ポジに興奮するはずないと口では言っても体は勝手に反応してしまう。
悲しい男子高校生の性を見逃したりはしない。
それでも
「おっぱいに誘惑されないゆうお兄ちゃんはやっぱりカッコいいよ。他の男子とは全然違う」
勢いよくベッドから立ち上がると鏡の前で髪を整える。
もしかしたら
いつ、どんな時でも
自慢のツインテールをかき上げると、鏡にはいつも以上に自信に満ち溢れた自分の姿が映る。
「今は負けていても最後に勝てばいい」
家庭教師をしてもらっている時に
この言葉のおかげで現に今、同じ高校に通っている。
自分の人生に
「ゆうお兄ちゃんは
自分の好きな人が他の女の子と仲良くしているのはとても辛い。
同じ部活に入れば見せつけられてしまうことだってあるかもしれない。
でも、自分の努力を認めてくれている人が部の中にいる。
「まだ付き合ってないなら、さっさと付き合ってもらって、さっさと別れてもらわなきゃ」
それでも
「ゆうお兄ちゃんがグズグズしてるなら、無理矢理にでも告白させちゃうんだから」
オーディションに落ちた悲しみはすっかり消えた
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