第30話
「はぁい。みんな目を開けてもいいわ」
投票を無事に終えてみんなの顔が心なしかほっとしているように見える。
「もったいぶっても仕方ないから早速結果を発表するわね」
思わずごくりと唾を飲んだ。
公平なジャッジという点においては本当に信頼できる。
性格は真逆なのに同じポーズをしているのがちょっとおかしくて、ほんの少し緊張が和らぐ。
「結果は4(よん)-2(に)で
「待って! 合わせて6っておかしくない!?」
「うふふ。誰が誰に投票したかは言えないけどぉ。
「まさか
僕の後ろで笑顔を堪える後輩に視線を向ける。
「
さっきの衣擦れは
本来の審査員であるところの
「自分が投票して負けるかもって思わなかったの?」
「それでもわたしは、あんなに大きな声で朗読できる
相変わらず僕の後ろに隠れている
まだまだ
入学式の時に比べると先輩の風格みたいなものが出ているようにも感じる。
「そ、そうですか。まあルナは自分に手を挙げたんですけどね」
照れ臭いのか腕を組んで
同時に
「
「謝らないでください。ルナの実力不足ですから」
「そんなことないって。新入生なのに部の活動にぐいぐい飛び込んでくるとか普通じゃできねーから」
「うんうん。来年に期待してる。持田先輩がいないとモチベーションが上がらないでしょうけど」
「来年は
「そ、それは……ねえ?」
「あれだけ力の入った朗読を見たら
さすがに投票制にしたので
僕と朗読するという目的を失っても文芸部に入るみたいで嬉しいやら困るやら複雑な気分だ。
「念のために確認しておくけど、
「もちろんです。ゆうお兄ちゃんはルナがいないと調子が狂っちゃいますから」
「おい。この一年間は
「そう? ルナが後押ししなかったら……」
チラリと
言いたいことはよーくわかってる。
現に
「ごほん。文芸部の活動はこういうのがメインじゃないってのはちゃんとわかっとけよ」
「大丈夫大丈夫。
僕の腕を掴むとギュッと胸に押し当てる。
「おい! 何して」
「えー? 妹にされても別にドキドキしないでしょ?」
「ま、まあな」
ツインテールをなびかせながら上目遣いで僕を挑発する妹ポジ。
正直な体に落ち着くように指令を送るも、この無意識の興奮は簡単には抑えられない。
「ほ、
「
体は小さいくせに先輩に対して強気の態度を取る
だけど
「恋人でもないのにそれは近すぎると思う……です」
「でも、
僕は腕と背中を後輩二人に押さえられて簡単に身動きが取れない。
「……まだ」
「ん?」
「まだ……付き合ってないだけ……です」
やっぱり声は小さいけど、その言葉には強い意志が込められていた。
普段ならさらに相手を煽る
そんな部員達の前で発せられた
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