第17話
ガタッ!
妹ポジの頭に触れるまで残り数センチのところで
見慣れた顔が目前まで迫ってくる。
状況の理解が追い付かず、僕はただ声も出せずに体が椅子に張り付いてしまっていた。
自分の唇が
そうなればもう妹ポジなんて言えなくなる。
兄と妹はキスをしない。
それはもう恋人の証になってしまう。
「だめ!」
それでも
僕の視線は瑞々しい唇に釘付けになってしまっている。
「うわっ!」
僕と
「むごぅ!」
視界が黒い。重い。だけど良い匂いがする。
布が何枚も重なっているので肌の柔らかさなんてものは伝わってこないはずなのに、
こんな風になるのは初めてで創造で補っている部分がほとんどなのに、頭の中にはふにふにの感触が浮かび上がってくる。
今は顔全体がブレザーの生地に覆われて言葉を発することができない。
そのおかげで素直な感想を口にせずに済んだ。
「あ……ご、ごめんなさいです」
バン! バン!
喋れない以上は他の手段で意思を伝えるしかない。
とりあえず机の上に残された左手を上下に動かして音を出してみた。
「そ、そうですよね」
僕の気持ちは伝わったらしく、
小柄で可愛らしいとは言え、さすがに顔で受け止めるのは厳しい。
「ふぅ」
「
「ビックリしたけど平気だよ。ケガもしてないし」
「……よかったです」
彼女が突発的な行動に出るのは本当に珍しいので驚いたのは本当だ。
それよりも
「あの、ではわたしはこれで。失礼します!」
「え? ちょっと
僕の安全を確認するなり
声を掛けても気に留める様子もなく、追い付くのは不可能だと思えるレベルだ。
あっけに取られた僕らはただ開けっ放しになったドアを見つめることしかできなかった。
「え~っと……どうしましょうっか」
この沈黙を破ったのは三枝だった。
展開が早すぎてどこからイジっていいのかわからない。そんな顔をしている。
「今日の活動はこれでお開きかしらねぇ。
妖艶な雰囲気を醸し出しているのに今はそれにピクリとも反応しない。
制服越しに伝わってきた
「ごめんね
「あ、いえ」
僕に何を言うでもなく、
「なあ
「え? あー。えーっと……顔を近付けた方が頭を撫でやすいかなって。あはは」
顔は笑っているけど目にいつもの明るさがない。
あの時、
もし
僕と
本当ならチョップでも入れて問い正したいところだけど、
「部活説明会まで時間がないからオーディションは予定通りに明日にするわ。もちろん、
「……ルナはやります」
「わかったわ。あんまりアドリブが多いのはダメよ?」
「はい」
さんざんやらかしてくれたけどやる気はあるみたいだ。
と、なると問題は……。
「
「うん。連絡しとく」
「助かるわ。正直、どう声を掛けていいかわからなくて」
「それはまあ、僕もだけどね」
それはきっと
理論的にはそう考えるのが妥当なはずなのに、それでもやっぱり今の関係がばらばらに崩れるのが恐い。
だからこうなったのは
時間がないことに変わりないのでオーディションは明日
夜、
本をもって返ってきてるので公園で練習
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