第7話
初めは僕の恋愛を応援してるのかと思ったけどそうではなかった。
ここまで背中を押した上で二人の間に何も起きなければ僕も
たぶんそんな計画なんだろう。
「それじゃあゆうお兄ちゃん、ルナは自分のクラスに行くから。またあとでね」
「あ、おい!」
普通なら真っ先に自分のクラスを確認して教室に向かうはずの新入生がいつまでも校門の前でお喋りしていたのに、急に態度を変えて立ち去ろうとする。
僕の呼びかけもむなしく
そんなに走ると胸が揺れて男共の変な視線を集めるぞ!
兄ポジとしての忠告もできず、ただ
「なんか、すごい子でした」
「妹ポジであることを良いことにやりたい放題なんだよ。昔から」
真逆のタイプである
僕としてはこのままの態勢でも一向に構わなかったんだけど、後輩の体温を感じられなくなった背中は妙に寒く感じる。
この点については
「あの、ごめんなさいです。ずっと隠れちゃって」
「仕方ないよ。上級生でもお構いなしで突っかかるやつだから」
「それに、ゆうお兄ちゃんっていう呼び方も特別で羨ましかったです」
「
小動物のように僕に懐いてくれて、守ってあげたくなる
「えと……それだと
体をもじもじさせて伏し目がちに断られてしまった。
冷静に考えたら後輩の女の子にお兄ちゃん呼びを提案してるのって相当気持ち悪いよな。
ハハハと乾いた笑いでこの場を誤魔化しつつ、相手が
「それと、さっき言ったことなんですけど」
「うん……」
いくら恋愛経験が皆無だからと言ってもさすがにそこまで鈍くない。
聞こえなかったふりも分からないふりもできない。
僕は間違いなく
その上で
「やっぱりご迷惑ですよね。受験生なのに彼女なんて」
「ぜんっっっぜん! むしろ彼女がいることで勉強の励みになるっていうか」
「そ、そうですか?」
後輩の表情がパァッと明るくなる。
僕が好きになったのは彼女のこういう顔だ。
出会った頃は長い髪で顔もよく見えなかったけど、話しているうちにだんだんといろいろな表情を見せてくれるようになって……。
気付いたら、僕は
「とにかく今は自分の教室に行こう。僕は2年生からの持ち上がりだけど
「は、はい。そうですね」
時間が差し迫っているのは本当だ。
新学期早々、校門の前で後輩女子とイチャコラして遅刻したなんて誤解を掛けられてはたまったものじゃない。
「また部活の時にでも話そう」
「お願いします」
「あれ?
小走りする後ろ姿を見ていて、あまり見たことのない後輩の
極端に短いわけじゃないので中はしっかりガードされているのに、それでも健康的な足は彼女いない歴=年齢の思春期男子の心をときめかせるのには十分過ぎるくらい魅力的だ。
「
サイドテールにしたって、さっきの小声の『すき』にしたって、スカートにしたって、
妹ポジの
「恋愛経験がない……か」
妹ポジの存在を言い訳にして行動を起こさなかったことを今さら悔やんでももう遅い。
今、手を繋いで一緒に登校しているカップルはどちらか、あるいは両方は勇気を出してこの幸せな空気を楽しんでいるんだ。
残り一年となった高校生活、
「やっぱりちゃんと告白しないとな」
自分への誓いを立てるように拳をギュッと握りしめた。
男として、先輩として、やっぱり好きな女の子にはカッコいいところを見せたい!
妹ポジはなんだかんだで兄ポジの恋愛を応援すると相場が決まってるんだから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。