第5話
周りからの嫉妬の視線に耐えながら歩く通学路もいよいよゴールが見えてきた。
校門をくぐれば1年生と3年生で入口が分かれる。
学年ごとに玄関が違うから、去年は間違えて新入生だらけの場所に踏み入ってしまったことを思い出した。
「あ、あの……」
ゴール直前の安堵感に浸っているところに、今にも消え入りそうな、それでいて守ってあげたくなるようなソプラノが脳に響いた。
「おはようございます。
「おはよう。
僕をきちんと先輩扱いする可愛い後輩。
少し前から髪をサイドテールにしたのでつぶらな瞳がよく見える。
「ふ~ん。この人が
「え、あ……あの」
一応先輩呼びはしているがどうもさっきから
下級生、それも入学したばかりの新入生にも関わらず
「こら
「え~? ルナ、何もしてないよぉ」
わざとらしく声を高くして張り付けたような笑顔で答える。
顔の可愛さと胸で男子からの人気は集められるだろうけど、女子から反感を買わないか少しだけ心配になった。
「
まるでライオンに狙われるウサギみたいで可愛らしい。
僕がこの子を守っていかなければ!
「はじめまして。
「つ、妻!?」
「つまらない嘘を付くんじゃありません」
「いたい!」
さらっととんでもないことを口走ったので僕は何の
力の加減を間違えたかもしれないけど、たまにはそんなこともある。
「嘘じゃないもん! 将来はゆうお兄ちゃんのお嫁さんだもん!」
「えっと、お二人は付き合っているのでしょうか……」
「ううん! こいつの妄言だから! 僕は彼女いない歴=年齢だから安心して」
「は、はぁ……」
安心してって
困った顔も可愛いと思っているのは秘密だ。
「そうそう。ゆうお兄ちゃんは高3にもなって彼女がいないの。だから初こ……いたっ!」
初対面の先輩がいるのにいつもの調子を崩さないメンタルと積極性は心の中で褒めてやろう。
これについては
「えと、二人は仲が良いんですね」
「まあ仲は良いかな。あくまで
「ゆうお兄ちゃん、ルナ達は本当の
「あ……ごめんなさい。わたし……」
僕は
「違うんだ!
断片的な情報だけ集めると
僕も表現の仕方がよくなかったと反省した。
「
「え? う~ん。そ、そう……なんでしょうか」
ツインテールを手でかき上げて自信満々に得意げな表情を浮かべる
それに対して
せっかくのサイドテールも心なしか
「
「ひっどーい! ま、こんな風に雑に扱ってもらえるのも夫婦としての信頼があるからなんですけどね」
よくもこうペラペラと適当な言葉を口から出せるものだ。
「えと、
僕の制服の裾を引っ張りながら上目遣いで質問された。
その瞳はじんわりと涙で潤んでいるように見える。
別に
これってつまり……!
「
「同じ苗字にはならないから。
「は、はい。ありがとうございます」
そのおかげで僕の影に隠れて裾を握ってくれているわけだけど、それがかえって
「ぐぬぬ……! この女」
「ひっ!」
もはやどちらが先輩かわからない。
僕としては悪者から
ここは兄ポジションとしてしっかりと教育せねばなるまい。
「こら
「ゆうお兄ちゃん、ルナのおかげでおいしい思いができたでしょ?」
「え?」
頭に手を振り下ろす直前、僕にしか聞こえないくらいの小さな声で
言葉の真意を掴めず、手は
「ルナ、ゆうお兄ちゃんと
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