第4話
「ゆうお兄ちゃん。今、他の女のこと考えてるでしょ」
たしかに
女の勘とでも言うのだろうか。童顔で子供っぽいくせにこういうところは恐ろしい。
「どうせ叶わない初恋だから別にいいんだけど」
「
「当然。むしろ
ここまではっきりと断言させるとさすがにへこんでしまう。
「失敬な。僕にだって女友達くらいいるんだぞ」
「えっ!? うそ!?」
あまりに大きな声を出すので周りの人が驚いてこちらに振り返る。
悔しいけど美少女と認めざるを得ない
事案扱いされる前にうつむいてできるだけ顔を隠した。
「女友達と言っても友達の友達というか、1年の時に仲良くなったやつの幼馴染だけど」
「ふーん? つまりその人は、ゆうお兄ちゃんの友達の彼女みたいな?」
「お前、本当に鋭いな。まあ付き合ってはいないけど実質カップルみたいな、見ててやきもきするタイプだ」
「後輩に告白できないゆうお兄ちゃんに言われるなんてよっぽどね」
「おいおい。
「そんなこと言ってどうせ告白なんかできないくせに」
「うっ……」
僕のことを好きだと言うだけあってよくわかっている。
常に
「でも、うだうだといつまでも片思いされても迷惑なのよね。ずっと浮気されてるようなものだし」
「うだうだと片思いは僕も終わらせたいところだけど、浮気はやっぱり納得いってないからね?」
腕を組んで考えごとをすると胸がギュッと押し上げられてその存在感が一層アップする。
学校に近づくに連れて生徒も増えてきて、追い抜きざまにチラリと見ていく男子の多いこと多いこと。
「ルナが付き添ってあげるから一緒に告白しよう? それで秒でフラれよう?」
「なんでフラれる前提なんだよ」
「可愛い
「人の嫌がるものを提案するんじゃありません」
「いてっ!」
母親同伴でデートするマザコン男に仕立て上げられたんじゃたまったものじゃない。
「うぅ……ゆうお兄ちゃんこそチョップはやめようよぅ」
「それは
「本当にそれでいいの? 周りをよく見てみて」
言われて周囲を見渡すと、男子からは嫉妬、女子からは興味の視線を感じる。
どちらも直接的ではないけどなんとなくオーラでわかる。
「これってもしかして……」
「新学期早々、新入生とイチャコラする3年生の図ね」
「しまった……」
1度決まれば卒業までは同じ色で、今年の1年生は3月まで卒業生が使っていた赤を使う。
2年生は緑、3年生は青といった具合に一目で学年がわかるようになっている。
「いや、でもちょっと待て。
「やっぱり呼び捨てにしないとダメなのね」
「だからなんで先輩予備が候補から外れてるんだよ」
「あっ! そっか。そういうことか」
「ふふふ。これは学生時代だからこそだもんね。うんうん。さすがルナ。さすが
「おい。誰が
僕のツッコミをスルーして
あーあーと発声をして喉の調子も整えている。
「
うるんだ瞳で僕を見上げながらいつもより少しトーンの高い声で言い放った。
普段の元気でお調子者の
ギャップを差し引いたとしてもロり巨乳ツインテール後輩という要素モリモリの美少女だ。
どんな男でも恋に落ちるに違いない。ただし……。
「うんうん。ようやく後輩として自覚を持ってくれたか」
「え? ちょっと、それだけ?」
ただし、この美少女を妹ポジとして捉えている男以外はだ。
「それだけって言われても……それ以外に何か?」
「いやいや! ゆうお兄ちゃんって先輩呼びフェチなのかと思ってやってみたんだけど」
「またゆうお兄ちゃんに戻ってるぞ。先輩と呼びなさい」
「やっぱり先輩呼びが好きなんじゃん!」
「僕は別に先輩呼びが好きなわけじゃないぞ。だからといって後輩扱いが好きでもない」
何が起きたのかわからないという表情だ。
ただ、それは僕も同じ。
「たまたま好きになった女の子が後輩だっただけで、別に年下や後輩が好きなわけじゃない。
「……告白する勇気がないくせに」
ボソッとつぶやかれた
ちょっとカッコいい風なことを言ってはみたものの、結局これは片思いでしかない。
仮に
「ま、まあ。それはさておき。せっかくだからこれから僕を先輩と呼んでもいいんじゃないか」
「うぅ~、それだと
ぶつぶつと何か言いながら
こんなやりとりをしながら歩いているうちに校門が見えた。
すでに2年間通ったはずの通学路なのに妙に長く感じたのは気のせいではない。
高校生活最後の1年間、今後の通学がちょっと不安になった。
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