第3話
「ゆうお兄ちゃん早く早く」
数メートル先を走る
大きく手を振りながら走っているので自然とその大きな膨らみもいい具合に揺れた。
周りにいる男共の視線が自然と
本人は気付いているのだろうか。
『胸が揺れてるからもう少しゆっくり走れ』なんて言えず、僕は兄ポジとしてこう言った。
「ちゃんと前を見て走らないと危ないぞ」
やっぱり僕と
きっとこれ以上に親密にはならないし、大人になるに連れて少しずつ接触も減っていく。
「おっと。すみません」
「ほら、言わんこっちゃない」
長いツインテールが
「あれー? ゆうお兄ちゃん、JKになったルナに惚れちゃったかな? いいよ。結婚を前提にした彼氏にしてあげる」
「なんで上から目線なんだよ。僕は危なっかしい
ごほんと咳払いをして自分の心を落ち着ける。
確かに今の
「ゆうお兄ちゃん、勉強はできるけど運動はあんまりだもんね。へっへー! これから運動でマウントを取ってくから」
「マウントを取ってどうするつもりだよ」
「んー? 体育祭で活躍して人気者になったルナに嫉妬させちゃうとか」
「可愛い妹ポジの後輩が人気者になったら兄ポジとしては嬉しい限りだよ」
「むぅ! 素直じゃないんだから」
どうやら
「ところで」
数歩先を進んでいた
ツインテールとスカートがふわっと舞って再び妹ポジにドキリとさせられてしまった。
「
「おいおい。
「わかってるよ」
むすっとふてくされたようにほっぺを膨らませる。
僕がちゃんと
「それにしてもさ、ゆうお兄ちゃんがルナ以外の後輩に慕われるなんてちょっと意外かも」
「中学時代はお前が無断で学校に侵入してきたからな」
「えー? みんな、ルナのこと可愛がってくれてたよ」
「それは完全に僕の尽力のおかげだけどな」
僕が中学1,2年の時はまだ
公立に通っていたのでたまたま小学校と中学校がすごく近くて、なんなら小中の交流行事が年に数回あるくらいだ。
それをいいことに
「ゆうお兄ちゃんだってまんざらでもない感じだったじゃん」
「妹ポジの幼馴染を受け入れるのも兄ポジの役目だからな」
「またまたー。学校でもルナと一緒にいられて嬉しかったくせに」
にひひとイタズラな笑みを浮かべて僕の背中をポンポンと叩く。
「みんな完全に
「ぐぬっ! ま、まあ、妹系彼女だと思ってた人も少なからずいるんじゃないかな」
「自分でも妹と認めてるじゃないか」
「妹じゃないんもん! 妹系だもん! 合法的に付き合える可愛い妹系だもん!」
「自分で可愛いと言えるそのメンタルは褒めてあげよう」
兄ポジから見ても
ふいに褒められて頬を赤く染める姿もなんだかんだ胸をキュンとさせた。
妹ポジって要は他人なわけだし、僕だって男なんだからそんな時もある。
「あれれー? ゆうお兄ちゃん、顔が赤いよ」
「お前もな」
「そりゃそうだよ。だって好きな人に褒められたんだよ?」
「あれは褒めたというより皮肉のつもりだったんだけど」
「ゆうお兄ちゃん、もう少し素直にならないと生きずらくなっちゃうよ」
「人生を心配してくれる妹ポジの後輩がいて僕は幸せ者だな」
「そうそう。生涯の伴侶にうってつけだね」
だんだん口が巧くなっているというか、遠慮がなくなって無敵状態に突入している。
このまま放置して
「いいか
「むぅ……たしかに。2人の関係を隠した方が愛が燃え上がるかも」
「そういう意味に捉えるか。すごいなお前」
あまりのポジティブさに僕は深いため息を付いた。
僕が
昨年度のうちに勇気を出さなかった自分を恨んでも仕方がない。
グイグイくる妹ポジの後輩からアピールをスルーしつつ、僕は本命の後輩にどうアプローチするかを考え始めた。
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