○○○からの卒業⑨
―――この俺がフラれた・・・?
―――嘘、だろ・・・。
―――もう俺の春、いや人生は終わったというのか?
―――どうしよう、姉さんに何て言えば・・・。
―――中二病を止めずに告白をした俺が悪かったんだろうか?
―――いやでも、俺が今更中二病を止めたところで告白の結果は変わらなかった。
―――つまり最初から、俺に望みなんてなかったんだ・・・。
絶望に打ちひしがれながら昇降口まで戻ろうとする。 そこで中二病の三人に会った。
「気になって来てみたんだ。 結果はどうだった?」
「さっき、綾音さんが一人で戻っていくのを見たけど・・・」
眼帯をしている彼と学ランを羽織っている彼が問う。
「フラれたよ」
口にするだけでも辛かった。 だがまだフラれたという現実を受け止め切れていない自分がいる。 史暗の言葉にアクセサリをたくさん持っている彼が声を上げた。
「マジで!? え、それってやっぱり、中二病が原因? 止めていたら告白は成立していたのか!?」
「いいや、中二病という黒歴史がある時点でもう駄目みたいだ」
「黒歴史とは何だ?」
「さぁ? 俺にもよく分からない。 まぁ結局、俺が中二病であろうがなかろうが関係がなかったんだって。 ・・・今まで悩んでいた時間、全てが無駄だったんだ」
そう言って校舎へ入ろうとすると、アクセサリをたくさん持っている彼に呼び止められた。
「お前、これからどうするんだよ。 普通の人に戻るのか? それとも中二病のままでいるのか?」
「・・・あー、考えてもいなかったな。 フラれた時のことなんか。 正直どちらでもいい。 綾音さんに必要とされない人生なんて、どうでも」
「なら中二病のままでいろよ。 もう中二病を止める必要がなくなったんだ。 だったら、本来の自分の姿でいた方がいいだろ」
「そうだよ。 ここまで来たなら、あとは自分らしく生きよう」
「大丈夫だ。 俺たちが付いているから」
「・・・そうだな、ありがとう」
三人にそう言われ頷いて校舎の中へと戻った。 あのように言ったが、今はもう何も考えられないくらいにどうでもいいのだ。 そんな気分だというのに、上履きに履き替えた時一人の女子がやってきた。
「あ、あの! 史暗先輩!」
「・・・えっと、何?」
「卒業、おめでとうございます。 ・・・そして、ずっと好きでした!」
―――誰だろう、この子。
―――俺の名前を知っているみたいだし、俺のファンか?
特に見知った相手でもなく、話したこともない。 だから彼女が本気で告白をしているとは思わなかった。 実際史暗は“好き”という言葉を聞き慣れている。
いつも通り“中二病が好き”と言ってくれていると考えた。
「あぁ、ありがとう。 そう言ってくれて嬉しいよ」
「あの、私と付き合ってくれませんか?」
だがどうやら彼女は本気で告白をしているようだった。 よく知らない相手からの好意を嬉しくは思うが、困惑する気持ちの方が強い。
「・・・え? いやでも、君は」
「アンリって言います」
「えっと、アンリさん。 アンリさんは彼氏が中二病でも嫌がらないのか?」
「いいえ?」
「え、でも、彼氏が中二病って普通女子は嫌がるんじゃ」
「私は思いません。 確かにそう思う人はいるのかもしれませんが、私みたいに“彼氏にしたい”って思う人もたくさんいると思います。 それ程史暗先輩は、この学校では人気者なんですよ」
「・・・」
「・・・あの、何かありました?」
「いや、どうして?」
「いつもみたいに中二病的な発言をしないから・・・」
「アンリさんは中二病の俺が好き?」
「はい! だから告白をしたんです。 何があったのかは分かりませんが、元気を出してください。 そしていつも通りの先輩でいてください」
「・・・ッ、ありがとう! 告白には応えられないけど、自信が付いた気がするよ。 自分を大切にする! じゃあな!」
史暗はさらりと告白を断った。 アンリは泣きながら『・・・はい』とだけ答え俯いていた。
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