第5話 覚醒
ああ、そうだーー
彼女が俺の攻撃を力を、能力を知っているように
俺も彼女の力を『知っている』
「…………だ……」
拘束されていた腕に、脚に力を入れる。
ーーここは現実とは違う、精神世界だ。何度か戦って分かったが、この世界では単純な力では勝つことができない。心の強さがそのままこの世界では重要になる。
そう、俺が諦めさえしなければーー勝機はある。
すると、ぴし、ぴし、と力を込めたところから少しずつ水晶に亀裂が入っていく
やはり、この世界では精神の強さがそのまま力に直結する。ならばーー
拘束されている腕に更に力を込める
「まだだ……っ!!」
そして亀裂は次第に増していき、そしてーー
ーーついに、硝子の破れる音と共に水晶の楔は砕け散った。
「なっ……!?」
少女は驚愕の表情でこちらの方に振り返る。だが
「ーーー遅い!」
既に、俺はもう数分前の自分とは違っていた。
脚に力を込め、地を蹴り一気に少女との距離を詰め、一気に斬りかかる。
それに対し、相手は流石と言っていいほどの反応速度でこちらに向かって反撃の構えを取るが
「そうくると思ってた…!」
刃と刃が交わる瞬間、俺は剣を手放す。
「んなっ…!」
再び上がる驚きの声。その声を気にも留めず、そして俺は一気に少女の懐まで潜り込むと、服の裾を掴み、足を引っ掛ける。そしてーーー大きく背負い投げた。
「わぁっ!?」
予想していなかった出来事連続に対応しきれなかった彼女は、受け身を取ることもできず地面に叩きつけられた。
そして先程手放して、無造作に地面に落ちていた愛剣を蹴り上げると、ぱし、とキャッチし、少女の方に剣先を向ける。
「さて……これで俺の勝ち、だな」
そう言うと、地面に倒れたままの彼女は先ほどまでの雰囲気とは変わって目を回し、項垂れた様子で。
「いったぁ……普通自分の剣を捨てるとかありえないでしょお…」
と数刻前からは予想もできないほどラフな口調で愚痴を投げかけてくる。
予想以上に強く打ってしまったのか頭を押さえている。少しやりすぎてしまっただろうか…?
少なくとも彼女にはもう戦意を感じられなかったため、剣を鞘に収め、彼女に向かって手を差しだす。
「相変わらず、予想してない事には弱いんだな。……『イリス』」
すると彼女は少し驚いた様子で、しかしそれはすぐに微笑に代わり
「……まったく、思い出すのが遅すぎるよ」
かつて俺の最優の相棒であった彼女は、そんな軽口を言いながら、俺の手を取り立ち上がるのだった。
覚醒する記憶 @togami922
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。覚醒する記憶の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます