第6話 焼肉奢れって……マジかよ

今日は芽衣と例のショッピングセンターに来ていた。


「さーて、今日は何を奢ってもらおっかなー」


歩き始めて一言めがこのセリフである。


「ちょっと待て。まずは凛の誕プレだからな。奢るのは成功報酬だ」


渋々わかってるよと口にする芽衣。感情の起伏が激しいやつだ。

歩いているだけで通り過ぎる人の8割は振り返るほど綺麗な芽衣だが、俺からすると財布の敵だ。もはや俺は歩くATMとしか見られてないのでは?とすら思えてくる。


ふと芽衣が足を止める。


「そういえばあんた、ファッションセンスを磨きたいって言ってたよね?」


「まぁな、って言うか今日の俺のコーデよくない?」


今日は組み合わせたときに変んじゃない色合いを頑張って考えたファッションだ。結果出来上がったのは…


「えぇーとー、、、ゴキブリコーデ?」


…上下黒コーデだ。

しょうがないじゃん!あぁー制服が恋しい。黒だけでも変にならない制服が……


「私が選んであげよっか?凛ちゃんの誕プレ、めっちゃオシャレな格好で渡せば見栄えが良くなると思うよ?」


魅力的な話だが、芽衣がタダでこんなことをするとは思えない。


「報酬として何をさせるつもりだ?」


「あんたは私をなんだと思ってるのよ。別に何も対価なんて求めてないから」


芽衣はこう言っているが、タダより怖いものは無いという。きっと後日

あの時……したから奢れ。みたいなことを言ってくるに違いない。

それに次の誕生日パーティーには智樹が選んだ服を着るつもりだから出費は抑えよう。


「すげー魅力的だけど今回はいいよ。金ないし……」


「ホント何に金使ってるんだか……あ、ナニか」


「変なこと言うな!全く、お前に奢ってるから毎月足りなくなるんだよ!」


「あれはノート写させてあげた対価じゃない!」


「それ以外の時でも要求してくるだろ!」


「こんのぉー

歩く財布の分際でー」


「歩く、財布、、、」


俺は一瞬で近くのベンチに座り込む。


歩く財布、歩く財布、あいつ、俺のことそんなふうに思ってたのか。ATMよりマシか?ホントに美人局かよ……


「ごめんごめん。ジョークだから、ジョーク」


「……ガチっぽかった……」


「もぉーそんなにがっくりしないでよぉー。

3割……いや4割くらいしか思ってないって」


「半分くらい財布としてしか見てないじゃん!」


「じゃんとか言わないで、気持ち悪い」


もう俺、死のうかな……


「今度あんたのためにご飯作ってあげるから、許して」


「え!マジ⁉︎」


「現金な奴め、、、

ちゃんと作ってあげるから、今日は焼肉ね」


「俺ちょっと親に電話してくる……」


仕送り早めてもらうか……


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