第2話 小さな扉

講堂に入る前に楓は中の様子を伺う。講堂内ではネットを張っている部員達。

ラケットの準備をしているのでバドミントン部だろう。端の方ではまた別のグループが柔軟運動をしている。これが演劇部なのか?

少し入室するのに勇気がいる状況。楓は悩んだ末に今日は帰ろうと回れ右をしたとき、ガチャっとドアが開き上級生らしき女子から声をかけられる。

「お疲れ!君、一年やんな?もしかしてバド部の見学者?」

部員がそれぞれウォーミングアップをしていたが、全員の手がとまり、一斉に楓をみる。楓はしまったと思いつつ、もう後には引けない状況なので勇気を出して返答する。

「お疲れ様です。すみませんが、バドミントン部の見学じゃないんです」

 少しシュンとなる上級生。

「演劇部が講堂で活動しているってポスターに載ってたんですけど」

「あー。それならあの舞台の上が活動場所やで。入って奥の扉から入ったらええよ」

案外あっさりと教えてくれ、楓は上級生にお礼をいった後、講堂の舞台横にある扉に向かった。それにしても扉が小さい。一六〇センチしかない楓でさえも少し頭を下げてしまう。コンコンとノックをするも返事がない。意を決し楓はドアノブを回す。しかし、楓は知らなかった。この演劇部という部活がどれだけ危険な集団か。また、楓自身がこの放課後のたった二時間程度で今までの人生で経験のない強烈な体験をしていくことを。

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