荒廃した惑星。三つの勢力が戦争を続けるディストピア。それを支配する衛星……。設定も素晴らしいですが、それ以上に、噛み締めるように綴られた文章がとても美しいです。そして、そんな文章に綴られた、奇跡に近い愛の姿は殊更に美しいです。その美しさゆえ、何度も読み返したくなるSFです。
三つの勢力が争うシステムだけが残された惑星で、哨戒任務に就いた一兵士が敵対する勢力の「ある特徴」を持った兵士と出会う。兵士達は純粋に戦う道具として造られた存在であり、初めての贈り物がお互いに名前を付け合うこと———。荒廃の果てと言うべきポストアポカリプス世界のディストピアSFでありながら、同時に出会いの物語にもなっています。一万六千字の短編、おすすめです。