第11話 終結の筋道
ビークルの定員は2名とは言え、1人で横になっても狭い簡易寝台に2人で眠るのは窮屈だった。ビバーク装備の中からテントを出してきて設置し、毛布を敷いてその中に潜りこむ。砂漠の夜は冷えるが、テントは幸い寒冷地でも使用可能であるため、それほど冷気は入ってこない。念のためにビークルから取り外したヒーターをつけて肌を寄せ合うと、それだけで暖かかった。
星がつるりとした脚を私の脚に絡めてきて、もう一度あの柔らかくうねる温かさの中に潜り込みたい欲求が首をもたげてくる。
「夕陽…私たちは、愛を見つけることができたんだな。あなたが、私の愛だ。夕陽…」
抱き合うと、自然に唇が触れる。
「私たちは愛を見つけた。でも、この惑星の人間がもう一度愛や美を取り戻すには、どうすればいいんだろう」
星は私の胴に腕を回すと、ぴたりと体を寄せて私の腕のつけ根に頭を乗せた。
「やはり、この戦争は終わらせなければならない」
途方もない話だ、と私は言う。
「開拓者の船で、発送電衛星を管理している者に接触できないだろうか。3つの国のいずれにも与しない存在が、あるはずなんだ。そうでなければ説明がつかない。この戦争は、最早自力では解決できない隘路に入りこんでしまっている。外的な力が必要だと思う。でも、どうすればいいのか、わからないんだ」
星は僅かに首を振る。
手段を選ばなければ、戦争は終わる。発送電衛星を破壊するんだ。
「それでは、意味がない。戦争は終わるが、人類も死に絶える。私はそれは望まない」
探そう。見つかるだろう、きっと。愛を見つけたように。
「そうだな」
星は笑って、私は彼女を強く抱き寄せた。
「ここからが緩衝地帯だな」
星が双眼鏡を覗きながら言う。私も同じく双眼鏡を除いている。最大望遠にした双眼鏡で、ぼんやりと巨大な黒い建造物が視認できる。途方もない大きさだ。この惑星の始祖たちを運んできたのだから、当然か。
「こちらのレーダーは何も捉えていないが、そちらはどうだ?」
星がビークルの計器を確認しながら言う。こちらにも異常はない。星のビークルを敵性駆動体だと認識しているが、それは正常な反応なので、無視する。
「警戒するに越したことはないな。この遮蔽物の何もない場所を丸一日進むわけだから」
船の到着予定時刻は明日の朝だ。
警戒を続けながら予定のルートを走破し、野営の準備をする。夕陽を眺め、食事とは名ばかりの栄養補給をして、星を眺め、また抱き合った。
私たちは気づいていなかった。双方のビークルが、はるか上空を通過する敵性飛翔体を認識していたことを。
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