導師

「だっ! 誰だ!?」


 槍を構える彼の前に立っていたのは、藍色のローブに身を包んだブロンド髪の男性だった。

 長めの髪の毛をローブに隠し、スッとした鼻筋と垂れた眼元は優男のイメージを演出する。男性は仰木を見つめると、薄めの唇を緩ませた。


 「驚かせてすまないね。でも解放者が目の前で切られるのを黙って見てるわけにはいかなかったんだ。許しておくれ」


 すでに解放者であることを知られている。

 新手か――、と切っ先を上げると、男は慌てて手を振り弁解に出た。


 「君を襲おうってわけじゃないよ! どうか勘違いしないでほしい! 僕はただ話をしたいだけさ!」


 「……ふぅ、まぁそうだよな。助けてくれた人に失礼だった。悪い」


 「いいんだ」と安堵の息を吐いた男性は、改めて仰木に向いた。


 「さっきの戦い振り、見させてもらったよ。あの技術、そしてそのブレスレット。君、解放者で間違いないよね?」


 「ああ、そうらしい。昨日こっちに来たばかりで慣れてないけどな。んで、優男イケメン君が俺になんの用だよ?」


 口元に手を添えて微笑んだ男性は、嬉しそうに告げた。


 「僕はエリオット。エリオット=クロムウェル。フランス王国出身の解放者さ」


 「――君を、導きに来た」


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