第9話

 雪が積もった、寒い朝。世間はクリスマスのお祝いで、どこかウキウキな感じ。

 だけど自分は、いつもにも増して緊張しながら、登校した。足元が悪く、歩くのに気を使っていたから。ううん、それだけじゃない。というか、わかっている。本当の緊張の原因は―あんな手紙、置くんじゃなかったかな。迷惑だよね…。そんな風に、心が揺れ続けていたから。

 ドキドキしながら覗いた机の中にあったのは、細かく複雑に折りたたまれたノートの断片。ゆっくり、破らないように開いていく。指先が、震える。

 1分後。紙切れは、生涯の宝物になった。


        ***


『ゆいさん

 どうもありがとうございます。お返事を読んで、私にもまた新しい灯台が見つかるかもしれない、と思いました。少し時間がかかりそうですが、それでも、いつか来るであろうその日のことを想うと、少し元気が出ました。  はつみ』


 そう書いた付箋を(白紙の付箋を上に貼って隠してみた。一応…)貼ったけれど、翌朝、その付箋は無くなっていたけれど。返事はなかった。

 やっぱり迷惑だった? それとも。

「…何かあったのかな」

 口にしたら、急に不安な気持ちが押し寄せてきた。


 明日から、冬休み。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る