第8話

「灯台を見失う、か」


 いつもと違い、机に封筒が入っていてちょっとドキリとした。ちょっと古風な恋文のよう、なんてつまらないことを考える。内容は…身近な人には(身近だからこそ)言えない言葉があった。自分は、そうした意味では役に立てたのか?


 明日ではなく、今日、返事をする必要がある、と思った。便箋は、持っていない。買いに行く時間も、無い。ノートを1枚、できるだけ丁寧に破って、書いた。


『はつみさん


 長年の目標を失うのは、つらいことですね。おさっしします。


 でも、灯台は、目標です。目的地ではありません。ある灯台の灯りを見失ったら、別の灯台の灯りが見えてくることもあるかもしれません。または、空の星に、気づくかもしれません。星は、昔の船乗りが目印にしていたそうです。


 舟をこぐこと、時には、休んでもいいと思います。元気が出たら、少しだけ、またこいでみればいいです。何か見つかるかも。そして、いつやめても、いつ再開してもいい。無理をしないで、だいじょうぶ。きっと、だいじょうぶです。


 つまらない経験談ですが…。    ゆい』

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