第1話人物紹介・待ち合わせ(4)*改訂前版
待ち合わせ場所は駅前の自販機。今は時間の10分前だが、こういうとこ、自分でも無駄に真面目だなと思う。
「すみません。」
「うおわっ!」
突然死角から話しかけられて驚いて変な声が出てしまった。
「東さん..ですよね?」
「はい、ご連絡していただいた、」
「五谷です。五谷幸造です。」
「
五谷君は大学生くらいだろうか。陽の光で茶色い髪をセンター分けにしていて、温厚そうな顔だ。なんだろう、公務員の息子って感じかな。
僕はてっきり、ふざけてて調子こいたガキとかなんかが来ると身構えていたので拍子抜けだ。
「立ち話もなんなのであそこのファミレスでいいですか。」
「あ、うん。」
普通にエスコートされてしまっている。普通逆ではないのか。
「カランコロン...いらっしゃいませこんにちは、何名様でしょうか。」
「2人です。」
店内は昼下がりにも関わらず結構混んでいる。店員に案内されて席に着く。近くにトイレがある席だ。
「ご注文の方決まりましたらこち」
「アイスコーヒーと、東さん何にします?」
店員の台詞を遮って注文する五谷君。童顔だし実年齢よりも幼く見える。
「じゃあ僕もアイスコーヒーで。」
「かしこまりました、アイスコーヒー2つですね。」
「少々お待ち下さい。」
五谷君は店員がいなくなるのを待って話し始めた。
「ご連絡させていただいた件についてですけど。」
「君、本当に殺人犯について知っているのかい?」
「あなたも信じてくれないんですか。」
あからさまにガッカリした五谷君を見て、良心が痛む。
ジーンズのポケットからスマホを取り出して使い出す五谷君。何か動画を探しているようだ。
「これですっ!」
自分のたからものを自慢するように僕の鼻近くまで持ってきて見せる。首を引っ込めると彼は
「すいません」
熱中してしまっていたのだろう。
「この動画見てくださいよ。」
そう言って僕にスマホを見せる彼の顔は不気味に笑っていた。口が吊り上がっていて、さっきまでの彼とは別人のようだった。
「これはっ」
たかだか数分の動画が僕の、いや何人もの人生を狂わせてしまったこと、僕は悔やんでも悔やみ切れない。
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