第1話人物紹介・待ち合わせ(3)*改訂前版

時刻は2時を回った。昼飯が効いてきて、そろそろ眠い。欠伸が抑えられない。

「東ぁ〜。」

 スマホを弄っていたら突然呼ばれてびっくりする。編集長だ。デスクの奥の方からだ。彼のデスクはスモーキーマウンテンと呼ばれている。まあ単純にとっ散らかっているせいというのもあるが、オフィスの中のその一角だけ煙草臭いこともあるのだ。

 今編集長は禁煙二週間めで機嫌が悪い。のそっと立ち上がる編集長。最悪だ。ゾンビだろうか。(スマホが)バレたのだろうか。

「お前、記事進んでんのか?」

「ええまあ、それなりですかね。」

 つい嘘をついてしまう。それなり、いいや全然だ。

「この町で殺人、ましてや連続だなんて滅多に起きねえぞ。これ逃したら...分かってんだろうな。」

「お前がやりたいって言うから任せたんだ。そこんとこ忘れんな。」

 編集長は声にいちいち凄みがあるのに、叱られる時なんてたまらない。

「記者なら狙った獲物は獲れるまでケツに喰らい付いて離れるな。」

 編集長の口癖だ。いつも「記者として」とか「記者ならば」とか。理解不能。元々この仕事したかった訳じゃない。

 編集長の機嫌を察して周りの人達はいなくなっていった。僕はタイミングを逃してしまったらしく今やオフィスに僕と編集長2人きりだ。

 「えーっと、取材..行ってきます。」

「おーう。」

 そういえば、情報を売りたいってメールが一件来てたな。連続殺人犯の情報を持ってると言っているけれど、十中八九イタズラだろう。時間潰すついでにダメ元で行ってみよう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る